キャリア・アグリゲーション技術に初対応

 MDM9x25は、20MHz幅で下り最大150Mビット/秒を実現する、LTEの端末カテゴリ4に対応する。さらに、3GPP(3rd Generation Partnership Project)のRelease 10として規定されたLTE-Advancedの「キャリア・アグリゲーション」技術に業界で初めて対応した。

 キャリア・アグリゲーションは、複数の周波数帯域を統合して利用する技術である。「連続する20MHz幅をLTEサービスに使える携帯電話事業者は、現時点では少ない。実質的なピーク・データレートを高めるためには、キャリア・アグリゲーションに早い段階で対応する必要がある」(Peter Carson氏)と考えた。

 低消費電力化も進めたという。MDM9x25と組み合わせるRFトランシーバICでは、「電力増幅器(PA)の信号電力レベルを追跡して、動的に最も高効率な電源電圧に制御する技術を盛り込んだ」(Peter Carson氏)。

スモールセルをあらゆるところに
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 ネットワークの容量拡大のために3G/4G、無線LANに対応するスモールセル(小型基地局)があらゆるところに設置される時代に向けた投資も進めている。無線LANや有線LANなどの半導体を手掛ける米Atheros Communications社を2011年に買収(その後、Qualcomm Atheros社として事業を展開)したのに続き、2012年8月には屋内外のスモールセル向けSoCおよびソフトウエアを開発するイスラエルDesignArt社を買収した。

 多数の無線通信方式や周波数帯域が混在する時代には、それらをインテリジェントに切り替えたり並行利用したりする技術が必要になる。「現在の移動通信から無線LANへのオフロードの仕組みは昔ながらのものだ。今後は、セキュリティーを担保しながら自動的にハンドオーバーするような仕組みをチップセットに統合していく」(Peter Carson氏)。3GPPのRelease 8で規定された「ANDSF」(Access Network Discovery and Selection Function)などに対応させる予定である。

 1000倍のデータ・トラフィックに対応するために、無線ネットワークはどんどん複雑になっていくだろう。「Qualcommの目標は、ユーザーに通信方式や周波数帯域などの違いを意識させることなく、シームレスに無線ネットワークを利用できる環境をつくり出すことだ」(Peter Carson氏)。無線ネットワークの複雑化の問題を隠蔽できるようにチップセットを開発することで、トラフィック1000倍の時代を支える唯一無二の企業になろうとしている。