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 まずは、スナップフィットの形状についての検討だ。組み立て時の結合動作を軽減するには、スナップフィットのフック部(突起)の挿入方向にテーパやカーブを設ける〔図1の(1)〕。加えて、分解時に結合を外しやすくするには、抽出方向にもテーパやカーブを設けるとよい(ただし、外しやすさは結合という本来の目的とは逆向きの機能となるため、その程度には注意が必要だ)。併せて、脚部を長く、薄くすると、脚部が柔軟になり挿入しやすくなる〔同(2)〕。

図1●ジョイントデザインにおけるスナップフィットの事例
図1●ジョイントデザインにおけるスナップフィットの事例
スナップフィットは標準化されていないため形状を自由に設計できる。その分、工夫が必要だ。結合部の数や位置も含めて、8つの典型的な事例を集めた。

 スナップフィットは組立性では群を抜いて優れているが、分解となるとやや難があるともいえる。特にフック部が内側に向いていると、フック部を両側へ開いて外さなければならず、両手での作業が必要になる可能性が高まる。これを避けるには、フック部を外向きにしておく〔同(3)〕。どうしても内向きにしなければならない場合は、結合を外す動作を軽減する形状(例えば、つまめばフック部が外側に開く洗濯バサミのような形状)をあらかじめ採用しておくとよいだろう〔同(4)〕。

 スナップフィットの形状だけではなく、結合数や位置も大きく組立性・分解性に影響する。結合数は、少なくするのが基本〔同(5)〕。結合数が膨大になるようでは、他の結合方法の方が組立性・分解性が高いということになりかねない。

 結合の位置は、2方向に4カ所の結合をしなくて済む場合は一方向2カ所にとどめる〔同(6)〕。この時、位置を上下左右対称にすることも重要だ〔同(7)〕。こうすることで、組立性・分解性を維持したまま結合力を高められる。

 分解性向上のためにはフック部を露出させるのが基本だが、どうしても露出させるのが難しい場合は、ドライバーなどの工具を挿入できるような設計にするとよい〔同(8)〕。

 これらの事例を参考に、社内でスナップフィットの設計標準を作成しておくと便利だろう。