組立性設計、成功の秘訣

 筆者は1980年代後半当時、前職のメーカーで産業用ロボット事業部門も兼務していたため、他社の生産現場を訪問する機会が度々あった。そこでよく目にしていたのは、戦艦のように大きくて高価な自動化ラインである。人による組立作業に比べてコストが安くならなければ自動化しても意味がない。しかし、大型の自動化ラインを保有していた現場はどこも、本来の目的であるコスト削減効果を生み出せずに苦労していた。やむを得ずに見学用ラインになっている大型ラインを見たときは、なんとも寂しい気持ちになったものだ。

 その一方で、自動化を成功させた例も多く見ることができた。成功例に共通していたのは、見た目の派手さはないものの実にシンプルであること。多機能のロボットではなく、幾つかの機能しか持たない「不器用なロボット」を上手に使いこなすことで導入コストを下げ、自動化による効果を生みやすくしていたのだ。海外から見学に来た技術者が「製品は最先端なのに、それを製造するラインは実にシンプルで素晴らしい」と感嘆していたのを記憶している。

 そう、自動化を成功させていたのは、単純な動作しかできない不器用なロボットを導入したラインだった。そして、その実現には、不器用なロボットでも組み立てられる製品を設計することが不可欠だったのだ。