半導体業界では,過去10年間に多くの企業が事業の統合や再配置を進め,業界の様相が大きく変わった。複数の電機メーカー大手が半導体事業の分社化や統合を進めたことがその一例である。このような業界の変化は,昨今の経済状況の下でさらに加速しそうだ。

 半導体メーカーにとって,こうした状況において重要となるのは,自社の資産を把握し,その価値を高める戦略を実行することである。特に,一般に評価が難しいとされる無形資産の価値を把握することが大切となる。実際,米国では,他社の買収といった事業判断を下すための材料として,技術資産を定量的に評価することの重要性が認識され始めた。

特許の質を定量的に分析する

 米国では,特許や商標,ノウハウといった無形資産が企業価値の80%を占めるとの調査結果がある注1)。特に,技術を競争力の源泉とする半導体メーカーは,特許の取得と維持,他社への供与,特許訴訟に数百億円を投じている。そのため,各メーカーの知的財産,特にその大半を占める特許資産の質を把握することが,各社の知財戦略を考えるうえでの第一歩となる。

注1)米Ned Davis Research, Inc.の調査による。

 以下では,売上高で上位20位までの半導体メーカーを対象に,米国特許の取得状況や知財絡みの企業買収の事例を分析する注2)。さらに,保有特許を格付けする作業を通じて,各社の特許ポートフォリオの特徴を明らかにする。ここで,特許ポートフォリオは,どの分野でどの水準の特許を何件保有しているかを一覧で示したものであり,各社の特許戦略を映す鏡となる。

注2)売上高ランキングは米iSuppli Corp.の調査による。