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図5-1●損益分岐点の概念図
図5-1●損益分岐点の概念図
利益と損失の分かれ目が損益分岐点。総費用は固定費と変動費の合計で、売上高がこの総費用と同額なら利益はゼロとなる。

 限界利益と同様に、利益と費用を考える上で欠かせないのが損益分岐点である。変動損益計算書の固定費と変動費、売上高、利益の関係は図5-1のようになる。固定費と変動費を足したものが費用の合計(総費用)であり、売上高から費用を引いたものが利益である。売上高が総費用を下回れば損失が、上回れば利益が生じる。この損失と利益の境目が損益分岐点となる。その金額を損益分岐点額、損益分岐点額を売上高で割ったものを損益分岐点比率という。

 このグラフを見れば、どうしたらより利益を出せるかが分かる。当たり前だが、限界利益率がプラス(売上高が変動費を上回っている)なら、売り上げに応じて利益も増える(図5-1のグラフの右上ほど利益が大きい)。

 一方、売上高は同じでも、損益分岐点を下げることで利益を増やす方法もある。損益分岐点を下げるには変動費率を下げるか固定費を下げるという2つのアプローチがある。変動費率が下がれば、売上高×変動費率の減少分だけ利益は増える。固定費が下がれば、その額だけ利益は増えることになる。

 ここで、変動費率を下げることを考えてみよう。方法は幾つもあるが、すぐに思い付くのは代表的な変動費である材料費などを削減することだ。これは、日ごろから技術者も気を付けているだろう。変動費率の低い(=限界利益率の高い)製品の販売構成を増やし、変動費率の高い(=限界利益率の低い)製品の販売を縮小する方法も有効だ。これがいわゆる「機種構成の良化」である。

 この他、製品単価を上げても変動費率は下がる。顧客が高い単価に納得する魅力のある新たな製品を提供できれば、相対的に変動費率は下がるということだ。つまり、損益分岐点を下げるには、[1]固定費を下げる、[2]変動費を下げる、[3]機種構成を良化させる、[4]製品単価を上げる、の4つがポイントになる。