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 会社のお金を把握する上でぜひ知っておくべきなのが貸借対照表(B/S)の見方である。実は、日頃、損益計算書(P/L)は見ていても、B/Sはほとんど見たことがないという技術系経営者は意外に多い。しかし、海外拠点でキャッシュフロー経営を実践していくために、ぜひB/Sは頭に入れておいてほしい。

 B/Sは、左側を借方と呼び、これが会社にある現在の資産を表す。一方で、右側を貸方といい、これは会社がどこから資金を調達したかを表している(図3-1)。すなわち、借方の資産とは、貸方で調達したお金を使って事業に必要な資産に変えたものということである。

図3-1●貸借対照表(B/S)の様式例
借方は現在の会社にある資産を、貸方はどこから資金を調達したか示している。
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 ここでチェックすべきことは、借入金を含めて調達した貴重なお金が、生きた使い方をされているかという点だ。すなわち、借方にある資産は、本当に今の事業に必要な資産だけか、回るべきお金が遊休資産などとして寝て(遊んで)いないか、そして真に価値ある健全な資産として管理されているかということである。

 もし、遊んでいる資産があれば、それらは売却するなどして借入金の返済に回せる。つまり、徹底的に借方にある現金以外の資産を圧縮して現金に変えるべきなのである。

 長期間滞留している棚卸資産(在庫)はないか、未回収の売掛債権はないか、動いていない設備はないか、などという点も経営面での重要な管理事項だ。長期の滞留在庫は1カ所に集め、誰がいつまでに現金化することになっているかが一目で分かるように管理したい。長期滞留在庫は陳腐化して廃棄につながる可能性も高いだけに、早期に現金化することが大切だ。