資金繰りはできているか

 技術系経営者がまず押さえるべき経営上のポイントは、資金繰りである。技術者が経営を任された海外拠点で特に多いのが、資金繰りに関するトラブルだからだ。日本では資金繰り表など見たことがないという技術者が多い。その必要性を理解していないからだろう。

 最も注意しなければならないのは、生産ラインの立ち上げ時の資金繰りだ。立ち上げ時はトラブルが発生しやすく、計画通りに生産できずに販売が遅れるケースが目立つ。ところが、それでも従業員の給与は支払わなければならない。材料も既に調達しているのだから支払いは避けられない。そのため、販売の遅れで入金がないと、いきなり資金不足に陥ってしまうのである。

 売掛金や在庫の増大で資金が減るといった状況も少なくない。経営診断してみると、長期の未回収債権が放置されたままという企業もある。特に中国やインドなどでは、代金をなかなか回収できないことがある。そうした事態は当然、資金繰りの悪化を招く。だが、資金の減少は、収益と費用を示す損益計算書(P/L)からだけでは分からない。P/Lだけを見て「利益が出ているから大丈夫」と思っていると大変な目に遭ってしまう。