細やかなサービスに価値

 今回の中国人観光客の行動観察調査を通じて、「中国市場に日本が提供すべき価値」とは、「細やかな気遣い」だと思われる。中国人観光客がみな口にした「日本で感激したこと」は、「きめ細やかなサービス」であったからだ。

 例えば「接客」である。顧客の意図を汲み取った上での丁寧なサービスには、みな感銘を受けていた。中でも、会社を経営するCさんは、「人材育成のため、社員を日本に連れてきて、この素晴らしいサービスを経験させたい」とまで言っていた。

 接客だけでなく、日本にある「モノ」もきめ細やかなサービスの一つである。Aさんが東京から大阪に夜行バスで移動したとき、彼女は感激したという。何に感激したかというと、それは夜行バスの座席の作りである。各シートには幌のようなものがあり、それを下ろすと顔が隠れてプライバシーが守られ、自分の寝顔を他人に見られなくて済むのである。こうしたモノづくりの背後にある細やかな配慮に感激し、Aさんはこのシートの写真を撮って、友人に知らせるためにブログにアップしていた。

<最後に>

 今回の行動観察を通して、中国人観光客の日本での旅行体験に関する詳細な事実を知ることができた。さらに、その事実から深い洞察が得られた。新しい気づきは新しい価値を生む。新しい価値をどう作るべきか、次のサービスはどうあるべきか、そしてそれらはどう提供するべきか。今回の結果がこれらを考えるのに役立てば幸いである。