スマートフォンを使わない

 これまで見てきたように、屋内測位向け技術を開発する企業の多くが、スマートフォンの活用を前提としている。これに対して、あえてスマートフォンを使わない手段を選んだのが、NTTコミュニケーションズである。同社は、通信距離の異なるBluetooth基地局と専用端末を組み合わせた測位技術「C-Shuttle」を開発している。

図5 子供の見守りに活用<br>NTTコミュニケーションズは、通信距離が異なるBluetoothのClass1およびClass2出力の送信器を組み合わせて、小学校の教室ごとの測位を可能にした。
図5 子供の見守りに活用
NTTコミュニケーションズは、通信距離が異なるBluetoothのClass1およびClass2出力の送信器を組み合わせて、小学校の教室ごとの測位を可能にした。
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 C-Shuttleは現在、児童見守りシステムとして、新潟県三条市の小学校で実証実験中である。GPSとBluetoothに対応した小型端末を児童に持たせるとともに、Bluetoothで小型端末と通信する基地局を通学路近くの住宅や企業、市の施設などに設置して児童の位置を把握する仕組みである(図5)。「教育上の観点から、子供にケータイを持たせたくない」(三条市の教育委員会)というニーズに合致しており、順調に進めば2013年4月からの実用化が可能になるとする。

 C-Shuttleが提供するのは、児童の位置情報や、登下校の情報である。児童の位置情報は、5分ごとにGPSで測位して、測位結果を近くにある基地局にBluetooth(Class1:通信距離は最大500m)で送信する。基地局はさらに、無線LANを経由してサーバーに情報を送る。

 学校内の各教室には、通信距離が30m程度と短いBluetooth(Class2)に対応した基地局を設置している。この範囲に児童が持つ小型端末が入ると、登校したことを小型端末がBluetooth(Class1)対応基地局に送信する。逆の場合は、下校したことを通知する。その後、Bluetooth(Class1)対応基地局が、無線LANを経由してサーバーに情報を送る。