(2)の精度向上を優先してインフラと端末のどちらも変えようとしているのが、宇宙航空研究開発機構(JAXA)などが開発した「IMES(indoor messaging system)」と呼ぶ測位技術である。簡易型のGPS信号送信機を使って、GPSと同じ周波数帯やデータ形式の信号で緯度と経度、高さの情報を配信する。無線LANのように信号強度から位置を推測するのと異なり、緯度・経度の情報が直接分かるのが特徴だ。

 IMESを誰もが使える状態にするには、送信機を設置するとともに、スマートフォンなどのGPSを受信できる端末のファームウエアを変更する必要がある。このうち、まずはインフラ側からの動きが出てきた。IMESの普及促進団体「IMESコンソーシアム」が、東京都世田谷区の商業施設「二子玉川ライズ・ショッピングセンター」の各フロアに、合計で数十台のIMES送信機を設置したのである。これにより、対応端末があれば、いつでもIMESの効果を検証できるようになった。2012年春には、スマートフォンとBluetoothで通信するIMES受信機を約100台貸し出す予定である。商業施設を運営する東京急行電鉄(東急電鉄)は「位置情報で街の魅力を高める」(同社)ことを狙っており、位置情報関連技術を同施設に積極的に導入している(図4)注6)

図4 位置情報関連技術のメッカに<br>二子玉川の商業施設に屋内測位技術「IMES」が導入された。東急電鉄は、位置情報技術を活用して街の魅力を高めることを狙う。(写真:建物外観とQRコード、屋内地図は東急電鉄、IMES送受信機は測位衛星技術、混雑状況共有アプリは慶応義塾大学、パノラマ画像はカディンチェ)
図4 位置情報関連技術のメッカに
二子玉川の商業施設に屋内測位技術「IMES」が導入された。東急電鉄は、位置情報技術を活用して街の魅力を高めることを狙う。(写真:建物外観とQRコード、屋内地図は東急電鉄、IMES送受信機は測位衛星技術、混雑状況共有アプリは慶応義塾大学、パノラマ画像はカディンチェ)
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注6)商業施設事業者などが位置情報サービスの構築を容易にするために、国際航業と慶応義塾大学が共同で開発したLBS(位置情報サービス)プラットフォームを活用している。これにより、地域情報や店舗情報、施設のフロア・マップ、ソーシャル・メディア・アカウントなどのさまざまなコンテンツを、位置情報と連動して提供できる。

 二子玉川の商業施設以外にも、IMES送信機が設置される可能性がある。IMESを推進する企業の一つである測位衛星技術は、IMES送信機向けのモジュールを最大で1000個ほど試作して、世界中の研究者や企業に提供する予定である。IMES送信機を設置する施設を増やして、対応端末の登場を後押しする注7)

注7)IT関連ベンチャーのインディゴは、オフィス向けにIMESを活用したツール「Map MashUp Manager for インドア」の提供を計画している。フリー・アドレスのオフィスでは、打ち合わせをしようにも、人がどこにいるのか把握するのも容易ではない。そうした用途で使いたいというニーズがあるという。