「この仕事が片付いたら…」

韓国・馬山のTandy Electronics Koreaの前で,従業員と撮影。左から二人目が内海氏。
韓国・馬山のTandy Electronics Koreaの前で,従業員と撮影。左から二人目が内海氏。
[画像のクリックで拡大表示]

 バイヤーとしての内海は,アジアの安い労働力を活用して製造されたオーディオ機器や携帯機器などのエレクトロニクス製品を,RadioShackの店頭 で販売するために大量に買い付けた。その過程で内海は,米国や世界で売れる製品にするために,メーカーに仕様の変更や価格の引き下げを厳しく求めた。必要とあれば,技術者を引き連れ,新たにライバル企業となる工場を設立したこともある。

 こうした内海の仕事は結果として,台湾や韓国,中国の多くの電子機器や電子部品のメーカーを,世界へ羽ばたかせるキッカケを作った。RadioShackを通じて,彼らに世界で通用する製品作りを教え,また,彼らの製品を世界の市場に紹介したからだ。

 内海は最近,成長が著しいアジア市場で,日本の電子機器を拡販するシナリオを専ら練っている。かつてはアジアで作った製品を米国に売っていたが,今やすっかり逆転した。

 だが,台湾のChuangや,韓国のLeeといったポン友たちが,内海の仕事を支えるのは今も昔も変わらない。

右がJ\. K\. Lee(李重九)氏。中央は,韓国KTV Global社のCEOを務めていたJ\. H\. Lee氏。左は内海氏。KTV Global社の新工場完成を祝う式典で撮影したもの。J\. H\. Lee氏は現在,別の会社で勤めている。<br>(写真:中島 正之)
右がJ. K. Lee(李重九)氏。中央は,韓国KTV Global社のCEOを務めていたJ. H. Lee氏。左は内海氏。KTV Global社の新工場完成を祝う式典で撮影したもの。J. H. Lee氏は現在,別の会社で勤めている。
[画像のクリックで拡大表示]

 「この仕事が片付いたら,台湾で暮らす息子夫婦の所でも行くよ」

 好物のタバコ「プレミア」をくゆらしながら,遠くを見るように目を細めて内海は笑う。だが,日本のエレクトロニクス業界が,この希代のバイヤーを手放すまでには,今しばらく時間がかかりそうだ。