ノキアが日本に拠点構築

 こうして,Nokia社の意向を受けたA&Aジャパンに,Nokia社向けに部品を調達する部門,通称ノキア課が発足する。TMCはあくまで製造委託会社であり,部品の販売権などを保有していなかったため,別組織が必要だったのだ。

 ノキア課は,日本の部品メーカーから携帯電話機用の部品を購入して,サロ市にある工場に送った。A&Aジャパンに対し部品価格の7~8%の業務手数料を支払っても,Nokia社は十分にコスト削減できたという。

 Nokia社への流通ルートの整備は,日本の部品メーカーが欧州携帯電話機市場へ進出する契機になった。当時,A&Aジャパンの橋田が作った「部品供給企業リスト」は,掲載されたメーカーに多くの利益をもたらした注1)

注1) 橋田(現ノキア・ジャパン 取締役 最高顧問)はその後,日本の部品メーカーの輸出推進に貢献したとして,電気通信協会賞を受賞している。

 A&Aジャパンのノキア課はその後,ノキア・ジャパンとして独立する。Nokia社向けの部品調達業務を主眼に設立された会社だったが,徐々に重要性を増し,国内の携帯電話事業者向けの端末開発や,日本市場の調査,そして次世代移動通信方式の研究開発拠点へと陣容を拡大していくことになる。