日本で部品を調達

 内海が,Nokia社の担当者を驚かせるほど部品コストを低減できたのには理由がある。主要な部品の多くを,日本のメーカーから調達したのである。

 TMCが発足した当初,製造する携帯電話機の設計はすべて,フィンランドのサロ市にあるNokia社の移動通信事業部の本拠地で行っていた。加えて,利用する部品も欧州で調達し,韓国に輸送していた。つまりTMCは,組み立てだけを担当する状況だったのだ。

 TMCの携帯電話機製造はこの形でスタートしたものの,すぐにTMCのスタッフや内海は疑問を感じ始めた。わざわざ韓国まで部品を持ってくるなんて,ナンセンスじゃないか。携帯電話機で利用する高周波部品の多くは日本の部品メーカーも手掛けており,価格競争力もあった。部品は日本メーカーの国内工場か韓国工場から調達した方が安くあがるのではないか,と考えたのだ。

 内海らは,Tandy RadioShackの日本での購買業務を引き受けていたA&Aジャパンのスタッフの力を借り,日本メーカーから部品を調達した。この部品でNokia社の設計による携帯電話機を,試しに製造してみるためである。

 この時に,日本の部品メーカーを駆けずり回ってNokia社の設計に適合する部品を探したA&Aジャパンのスタッフの中には,後にノキア・ジャパンの初期メンバーとなる橋田公雄などがいた。