フィンランド首都のヘルシンキから,北東約300kmに位置するこの町は,湖に囲まれた風光明媚な保養地だ。毎年夏には,古城を舞台にした音楽祭「サボ ンリンナ・オペラ・フェスティバル」が開催され,欧州各地からの観光客で賑わいを見せる。サボンリンナで上演中の歌劇「Don Carlos」を見に行こうと,当時Nokia社副社長だったSimo Vuorilehto(1988~1992年に同社CEOを務める)に,内海は誘われたのである注1)

注1)内海は当時,Nokia社のChairman兼CEOであるKari Kairamo(Vuorilehtoの前任者)と親交があり,Tandy社 CEOのJohn Roachに紹介したという。

サボンリンナの古城の前で撮影。中央で眼鏡をかけているのが内海氏。これから,Nokia社の重役とオペラ「Don Carlos」を見に行くところである。
サボンリンナの古城の前で撮影。中央で眼鏡をかけているのが内海氏。これから,Nokia社の重役とオペラ「Don Carlos」を見に行くところである。
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 内海の傍らには,Nokia社の移動通信部門であるNokia Mobiraの事業部長だったJorma Nieminenなど,Nokia社の重役が勢ぞろいしていた。今日はサボンリンナでオペラ鑑賞を楽しんで,その後,夜中すぎまでたっぷりと会議をすると いうスケジュールだ。白夜の中,長い1日が始まろうとしていた。

 内海がフィンランドに招かれたのは,Nokia社と,RadioShackを運営していた米Tandy Corp.が当時,携帯電話機の製造販売で提携したためだ。Nokia MobiraとTandy社が共同で,合弁企業のTandy Mobira Corp.を立ち上げた。このTandy Mobira社の製造工場のマネジメントを,内海が務めていたのである。