日本の製品を世界で売る男達
東京・西新宿。まだ超高層ビルの建造もまばらだった1970年代の初頭。14階建てのひときわ目立つビル「明宝ビル」に,スーツ姿の男たちが大きなカバ ンを手に,入っていった。ビル内の事務所に入ると,会議室で長机を挟み,数人の米国人と対峙するように座る。男たちはカバンの中からラジオやオーディオ機 器を取り出して,時間を気にしながら早口で説明を始めた。
「駄目だ。これは売れない。次」
中央に座るかっぷくのいい米国人が指示すると,男たちはがっくりと肩を落としながら部屋を出ていく。入れ替わりに,別の男たちが入ってきて,他の製品の説明を始める…。
この会議室があったのは,「Tandy RadioShack」の日本地域の購買業務を一手に請け負っていたA&Aジャパンの西新宿オフィスである。ここで年に数回,Tandy社の米国 人バイヤー同席の下,どのメーカーの,どんな製品を購入するかを決定する会議が催されていたのである。