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瀬口(日本VE協会会長の瀬口龍一氏) 今までの話を聞いて、私も経営者の端くれとして、特にVEを前面に掲げてやった立場から申し上げると、価値の定義は、経済学的にも、哲学的にもいろいろあるけれど、このV=F/Cという定義は素晴らしいと思うんです。これ以上の定義はないんじゃないかな。この式は経営そのものを表しているんです。

 Vは何かと言ったら、お客さんにとっての価値です。これは数値的に何で表現されるかと言えば、売り上げです。Vが上がるということは、すなわち売り上げが上がることなんです。それが何によって構成されるかと言うと、最終的にはF/Cとなるわけです。

 これをさらに分けると、私は、お客さんにとっての価値はF/P(プライス)だと思うんです。お客さんにとってのコストはプライスなのに対して、企業はとにかくPよりもCが低くならないと意味がありません。利益については、いろいろ考えがあるかもしれませんが、単純に言えば、P/Cが企業にとっての価値なんです。これを利益と称するんです。

 これとお客さんの価値であるF/Pを掛けるとPは消えちゃいます。それで結局V=F/Cとなるんです。コストもプライスも数値で表せます。Vも売り上げですから、数値として表れます。結局、数字で表現できるんです。だから私は、V=F/Cというのは経営の全てを表現していると思うのです。

 ある大会社の社長が「コストダウンをrespect(尊敬)されたものにするんですな」とおっしゃっていました。コストダウンというのは、企業の中で非常に重きを置かれていますが、安かろう悪かろう、手を抜いているんじゃないかいったイメージにもつながって顧客に受けません。つまり、コストに対する概念というものは、一般的に見ると必ずしもrespectされるものではないんですよ。

 ところが企業にとっては、極めて重要なファクターです。今、日本メーカーの薄型テレビの不振などいろいろな問題が出ていますよね。いろいろな要素がありますが、要するに値段の競争、コスト競争に負けたということです。

 そういうことから言えば、コストは依然として最重要課題です。コストを下げることは、価値を下げることだと思っている人が多いんですが、コストが下がることは価値を上げること。そういう点でV=F/Cという式は非常に優れたものだと思います。

 私は、数字的に表現することは経営的に可能だと思います。式を変形すれば分かります。F=V×Cなんです。だから、Vで価値を表せるんです。Vは売り上げですよ。機能を上げたら売り上げが上がらなければいけない。それは数字的に表現できる。それにコストを掛けるとFになるわけで、当然Fも数値になるわけです。