Fを向上させる訓練が必要

佐藤 私も横田さんもこの概念式を否定していませんし、コストリダクションについて不要論を投じているわけでもありません。絶対必要です。VEのプロセスでないところでも十分できますが、コストリダクションは絶対やらないといけないし、ASEANに負けないものづくり、コスト水準の達成は、経営的にも、我々ものづくりに携わっている人間にとっても、絶対の義務だと思っています。

 概念式のFの捉え方も、方程式としてはいいんですが、実務ではFを算出しにくい。それに対しては、さきほどの横田さんの理論やり方もありますし、Fについて個別に主要機能も分けて判断していくやり方もあります。

 Fが上がっていくことは、VE教育の中でもあまり強調されていません。私は、入門セミナーに30時間かけています。その中で徹底的に機能開発を訴えるんです。いろいろな題材に対して、もっとユーザーが満足する新しいFはないかというところに3時間も4時間もかけます。Fを向上させる訓練が身近にないと、どうしても原価低減型になるのではないかと感じます。

横田 私も基礎研修は3日かけます。そこで機能系統図の作成と、V=F/Cの基本式が肌に染みつくぐらい研修をする。VEはコスト削減ではないんだと。私の実務、本番のワークショップでも必ず全部Vを計算します。それも機能分野ごとに全部です。普通皆さんは機能分野ごとのコストしか出さない。あるべきコストと原価コストしか出さないかもしれないですけれども、私のやつは、機能分野ごとにあるべきファンクションと現行ファンクションを全部数値化して、全部Vを出します。

 だから、「コスト削減が何%、機能向上が何%、それを合わせた価値向上が何%、この案は価値向上が何%です」と明確に言える。従って「コスト削減はこっちのほうが大きいけれど、価値が向上するのはこの案です」と数値で説得できる。

 瀬口会長が言われたようにFは数値化できるし、佐藤さんもF/CのFに着目している。でも、残念ながら今ここに集まってきている人の3割ぐらいしかVを計算していません。これだけ素晴らしい式があって理解している人もいるのに、実務でどうして使わないんでしょう。使う機会がないのか、使う方法を知らないのか、使う意味がないから諦めているのか。それをもっと変えないと、VEの良さが分からないし、自分たちも分からなくなる。そういうのがすごく惜しいなという気がします。