横田 皆さんに挙手でお答えいただきたいんですが、VEをやるときに、V=F/Cを意識している人は手を上げていただけますか。

(会場の大半が挙手)

 これは全員上がらないといけないかもしれないですね。では、VEのステップの6つ目に対象分野の選定がありますが、そのときにVを計算して、価値の程度、コスト削減余地の両方を見ながら対象分野の選定をしている人は、どれぐらいいらっしゃいますか。

 (会場を見渡して)3割ぐらいに減りました。ということは、V=F/Cという非常に素晴らしいVEの基本式があるにもかかわらず、CとFをなんらかのかたちで数値化し、価値の程度ごとに改善対象を優先付けするというのが、実務レベルでなかなか活かされていないというのが実情だと思うんです。

コスト低減からの流れを変える

横田 我々VEに携わる人間は、価値向上が精神論で終わるのがもったいなくて、価値向上だなんて言って意気込むんだけれど、提案を受けたオーナー側、経営者側の人たちにあまり響きません。経営者というのは、幾らコストが削減されるのかというところに興味が湧く。そうすると、V=F/CのCにしか興味を持ってもらえないのです。

 いくらVが上がって、これは素晴らしい提案で価値が向上するからやろうと提案しても、Cが下がらなかったら意味がない。価値向上の原則となっていながら、4つのパターンがありながら、コストが上がる案を採用しづらい。オーナーが判断しづらいし、我々も説明しづらい。最終的には精神論になってしまう。そういうので、本当にもったいないなということがすごくありました。

佐藤 横田さん、F/Cの方程式は概念として僕は否定しませんが、結局Fが足し算できないんだと思います。品質と使用感とか、使用機能など、Fにはいろいろな機能がある。ペットボトルでいえば、水を蓄える機能とか、飲みやすさを確保する機能とか、漏れを防ぐ機能とか。Cはリアルに計算できるけれども、Fの単位が異なるのでFが計算できないから、しょせん概念式に終わっているんです。F/Cを意識しろと言って、いろんな手法の方程式をつくったけれど、そこのところに矛盾が存在しているんじゃないかと僕は思います。

横田 それはありますね。

佐藤 機能の目標の立て方から、流れを変えなきゃいけないんじゃないかと思います。そもそもVEがコスト低減に傾いているのは、日本に入ってきた経緯が原価低減、それも購入資材費の低減が中心だった歴史があります。かつて私がいた会社でも、上司がVEを理解していたとは思いません。彼らが要求したのは、やはり原価低減です。私自身もまだVEの技術が足りなかったし、テアダウンみたいな原価低減志向の技術を開発したので、「よくやった」となる。どうしても経営者の方が目先の利益を求めるんです。私が何度か社長賞などを受けたりしたのも、みんな原価低減ですしね。

 ですから、サラリーマンとしても原価低減をやると褒められるから、これは具合がいいなと言って、どうしてもFに行かない。僕は、そこのところがすごく気になっているんです。