デジタル家電の価格下落に苦しむ中、同家電よりも値崩れしにくい白物家電やヘルスケア機器に注力する日本企業が増えており、開発競争が激化している。その競争を勝ち抜く“切り札”としてNFCを選んだ企業が、パナソニックだ。

同社は、インターネット上のサーバーと連携させる「スマート家電」のほぼすべてに、NFCのアクティブ・タグを搭載した。冷蔵庫やドラム式洗濯乾燥機 (以下、洗濯機)、オーブンレンジ、炊飯器といった白物家電の他、体組成計や活動量計、血圧計のヘルスケア機器などである。パナソニックの家電機器が備え るアクティブ・タグは「自社開発品」(同社)。NFC-B(ISO/IEC 14443 Type B)とNFC-Fの両方式に対応する注1)

注1)日本にはFeliCaにしか対応しないスマートフォンがあるためにNFC-Fに、世界にはNFC-AまたはBにしか対応しないR/Wがある可能性が あるため、NFC-Bに対応した。「NFC-Bのタグとして働くか、Fとして働くかは、R/Wがどちらの方式で読み取ろうとしたかで決まる」(パナソニッ ク)という 。

図1 NFCを介してクラウドと接続<br>パナソニックの白物家電やヘルスケア機器は、アクティブ・タグを備える。NFCのR/W機能を備えたスマートフォンを介してインターネットにあるサーバー と接続し、さまざまな機能やサービスを利用できる。各種データの見える化や家電の制御などに活用する。(写真:パナソニック)
図1 NFCを介してクラウドと接続
パナソニックの白物家電やヘルスケア機器は、アクティブ・タグを備える。NFCのR/W機能を備えたスマートフォンを介してインターネットにあるサーバー と接続し、さまざまな機能やサービスを利用できる。各種データの見える化や家電の制御などに活用する。(写真:パナソニック)
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 スマートフォンが搭載するNFCのR/W機能を通じて機器のデータを吸い上げたり、あるいは機器に制御データを渡したりする(図1)。スマートフォン上 のアプリケーション・ソフトウエア(以下、アプリ)は、インターネットにあるサーバーと連携する。これにより家電がクラウド・サービスとつながる。スマー トフォンのアプリをアップデートすることで、新しいUIに変更できる。サーバー側で新しい制御パラメータを用意すれば、白物家電やヘルスケア機器の継続的 な機能拡張も可能になる。

 加えて、サーバー側に機器の利用状況などのデータを蓄積し、それを分析できる。つまり、これまで実現するのが難しかった「進化する家電」が誕生するのだ。

 もちろん、無線LANやBluetoothなどの技術を使っても、同様のことは実現可能だ。しかし、実装コストの問題や、設定の困難など使い勝手の問題 からこうした技術は採用されてこなかった。一方NFCであれば、アクティブ・タグを用いてデータを交換できる。このため、「無線LANで用いる TCP/IPや、Bluetoothのプロファイルといった複雑なミドルウエアが不要で安価に実装できる」(パナソニック)。

 ユーザーにとっても、スマートフォンをかざすという直感的な操作でデータを交換できるので、利用が簡単だ。電子機器の複雑な操作を好まない女性や高齢者も多用する白物家電やヘルスケア機器にとっては、まさにうってつけといえる。