新たなUIをもたらす

 単純タグが本領を発揮するのが、ユーザー・インタフェース(UI)での活用だ。その一例が、ユーザーが存在する実空間に即したUIの実現である。

 こうした取り組みとしてSony Mobile Communications社が海外で展開しているNFCタグ「SmartTags」がある。このタグに、専用アプリを搭載した同社の携帯端末「Xperia S/P/sola」をかざせば、場所やシーンごとに動作モードを切り替えられる。例えば、自動車内に取り付けたタグを読み込むと、スマートフォンが「カーナビモード」に自動的に切り替わる(図3)。スマートフォン内のGPSやBluetoothがオンになったり、道案内アプリが立ち上がったりする。タッチするだけで動作モードが切り替わるため、設定がより容易になる。

図3 NFCタグの利用が始まる<br>単純タグを貼り付けた「スマート・ポスター」では、所定の場所にNFCのR/W機能を搭載したスマートフォンをかざすとクーポンを取得できる(a)。イベントで用いる参加者用リストバンドでも、NFCタグの利用が始まった(b)。(写真:(b)はブリリアントサービス)
図3 タグを読み込んで動作モードを変更
Sony Mobile Communications社の単純タグ「SmartTags」にXperiaをかざせば、場所やシーンごとに動作モードを自動的に切り替えられる。例えば、自動車内や自宅玄関、寝室で設定やアプリが切り替わる。(写真:Sony Mobile Communications社)
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 慶応義塾大学 環境情報学部 教授の増井俊之氏は、さらに野心的だ。同氏らの研究グループは、コンピュータ上のメニューのような、GUIの操作を実世界で実現する研究をテーマにしている。その一環として、NFCのR/W機能を搭載したスマートフォンを実空間上の操作インタフェースとして用いる研究に取り組んでいる。

 例えば、NFCタグを貼ったスピーカーにスマートフォンをタッチすると、画面上にボリューム・ボタンが表示され、スマートフォンを回すと音量の大小を調節できる、といった具合だ。こうしたNFCタグにスマートフォンを重ねる動作は、「パソコンのGUIでボリューム・メニューを選んだのと同じ」(増井氏)である。