エレクトロニクス産業のさまざまな環境変化にどう対応すべきか。技術者に求められるのは、自ら道を切り開いていく強い意志だ。突然訪れた転機に、技術者はどう動いたのか。=文中敬称略

国内の大手エレクトロニクス関連企業から、韓国企業に転職する技術者が後を絶たない。以前は国内の大手企業に勤務し、現在は韓国企業で活躍する3人の日本人技術者に本音を聞いた。

――韓国企業への転職に踏み切った理由は。

佐藤 以前の会社で研究を続けていてもその技術が量産に結び付かないと考えて、転職を決意した。私自身、もともと海外で働きたいという思いが強かったため、距離や食文化などが日本に近い韓国企業を選択した。

川口 勤務していた国内企業の将来に不安を感じた他、業務内容に対する不満があった。最初は国内企業の転職先を探していたが、ディスプレイ技術者の募集がほとんどなかった。

奥山 ヘッドハンティングを受けたからだ。国内企業からも誘いを受けていたが、自分が研究した技術は韓国企業の方が実用化されやすいと考え、転職を決断した。

――待遇面は日本企業と比べて変化したか。「3年契約で数千万円」で引き抜かれたといった噂もよく耳にする。

川口 「契約社員」ではなく、「正社員」として入社した。会社からは「できる限り長く働いてほしい」と言われている。今の会社では、ある年齢で一定の役職に付かなければ居場所がなくなるため、どうなるかは分からないが…。

奥山 給与については、日本時代と比べて若干高くなった程度で、大幅に増えたということはない。ただし、韓国では外国人技術者に対する税制優遇措置がある ため、手取りの給与は増える。会社側の福利厚生も手厚い。家賃は全額会社が負担し、家電や家具は一式用意してくれる。社員食堂も月に一定回数(20数回程 度)までは無料で利用できる。

佐藤 「年収数千万円」で引き抜かれたという日本人技術者は、少なくとも私の周りにはいない。上司は、「長く働いてもらえる日本人が欲しい」と言っていたので、これから入る日本人技術者は正社員としての採用になるのではないか。