その結果、「国内メーカーが技術者に求めるスキルも変わった」と、人材紹介大手のリクルートエージェントでエレクトロニクス関連分野のキャリアアドバイ ザーを務める関野光剛(38)は指摘する。2~3年前まで英語力を求める国内メーカーの技術系求人は、1割程度だった。それが、最近は全体の1/3を占め るまでに増えた。「転職市場はグローバルになり、勤務地が海外の可能性も高い」という。

 国内メーカーで活躍する技術者は今後、海外で採用された現地の技術者との協力体制を、これまで以上に求められる。もちろん、国内で開発した技術の移転だ けではなく、新技術の開発でグローバルな競争関係が社内外で存在するようになる。実は、こうした業界の転機を早くから察知し、普段着のまま経験を積もうと 動いているのは、20~30歳代前半の若手技術者かもしれない。


 「きっと、すごい天才が集まっているに違いない。大丈夫か…。そう思っていた」。

 4年前に国内の私立大学で博士課程を終え、米Google社に入社した向井淳(31)は、入る前に抱いた同社の印象を、こう話す。

 特に英語が得意でもなければ、海外志向が強かったわけでもない。「幾つか考えた就職先の一つが、たまたまGoogle社という普通の学生だった」と向 井。ただ、学生時代に研究室の計算機管理を任され、オープンソース・ソフトウエアの開発も経験した。そうした活動の中で同社への憧れは抱いていた。

 入社して最初に手掛けた開発業務は、携帯電話向けのインターネット検索技術。その後、先輩技術者が勤務時間の一部を好きな開発テーマに充てる「20% ルール」で開発していた、日本語入力技術を手伝った。「新規サービスとして公開した際には興奮した。ユーザーの反応がじかに見える面白さがある」と、向井 はほほ笑む。

 米国でも日本でも、社内を歩けば業界で有名な技術者を見掛ける。そうした環境は技術者として刺激的だ。「入社してみたら、自分にできることは意外に多いと自信がついた」。