知財戦略には3つの視点がある。 [1]必須特許(製品を生産する際に、必ず用いなければならない特許)なくしてマーケット参入はないという「必須特許ポートフォリオ」 [2]市場と特許の2軸マーケティングと技術開発や知財取得の戦略をリンクさせる「知財経営モデル」 [3]経営上の課題を解決するために法律や実務、戦略に関する正しい知識に基づいて特許を取得(知財活動)する「知財経営定着」 である。これらの考えを抜きに事業競争力の維持・向上は期待できない。

 しかし、事業環境は刻々と変化しており、技術分野によっては、上記のような考えに基づく技術開発を実施するだけでは、万全とはいえなくなってきている。簡単に言うと「真っ先に技術開発して必須特許を多く取得することで、競合企業に対する優位性を保ち市場をリードしていく」という、これまで日本企業が得意としてきた技術開発/知財戦略(必須特許ポートフォリオ+知財経営モデル)の実践だけでは、競争力を維持できなくなってきたのである。

知財戦略論に限界が

 その背景にあるのは、「技術のコモディティー化」だ。太陽光パネルが1つの好例といえよう。

 日本ではシャープが1964年に初めて実用化し、それ以降、同社は2000年まで同分野で90%を超える圧倒的なシェアを誇ってきた。ところが、近年そのシェアは低下し続け、2010年には数%にまで下がっている。なぜ僅か数年で、このような顕著なシェア低下が生じたのだろうか。