ライセンス交渉,再び

 1審判決から12日後の1994年9月12日。敗れたTI社は,東京高等裁判所に控訴する(図3)。これにより,キルビー特許訴訟は第2ラウンドに突入した。

図3 控訴,上告,米Texas Instruments Inc\.(TI社)と富士通の闘いは続いた…。<br>(写真:日経エレクトロニクス)
図3 控訴,上告,米Texas Instruments Inc.(TI社)と富士通の闘いは続いた…。
(写真:日経エレクトロニクス)
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 一方,当時の国内半導体メーカが東京高裁での審理よりも興味の高い話題としたのは,地裁判決後にやって来るTI社と国内半導体メーカの包括クロスライセンス交渉だった。キルビー特許成立後,1990年~1992年にTI社と5年間のライセンス契約を結んだ国内半導体メーカは,1996年前後に更改時期を控えていた。

 1審判決を報じる多くの報道はこのことに関する影響について言及した。TI社も,判決後の会見で,『TIは日本の主要半導体メーカー16社とキルビー特許を含めたクロスライセンス契約を結んでいる。その更改が96年に迫っているが大きな影響はない』(前述の日経産業新聞記事から)とコメントしている。