2012年12月5日(水)~12月7日(金)に開催される太陽光発電の展示会「PVJapan」は、2012 年7月に「固定価格買取制度」が施行されたのを受けて前年を上回る盛り上がりを見せる見込みだ。そこで、一般社団法人太陽光発電協会(JPEA)と共同でこのイベントを主催するSEMIジャパンの代表を務める中川洋一氏に、最近の業界の動きや、今回のPVJapanの主な見どころなどについて聞いた。

中川 洋一 氏
SEMIジャパン代表

—太陽光発電業界の最近の状況は

中川氏 「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」が2012年7月1日に施行されたことを受けて、いわゆる「メガソーラー」と呼ばれている大規模太陽光発電施設を新たに建設する動きが日本国内で活発化しています。これは太陽電池パネルをはじめ太陽光発電に関連する製品を扱う企業にとって追い風といえるでしょう。ただし、低価格を前面に出して市場開拓を進める海外企業も、日本市場に注目しています。このため市場における企業間の競争は一段と激しさを増す可能性があります。

—太陽電池向け製造装置については、2011年からSEMIが市場統計「Worldwide PhotovoltaicEquipment Market StatisticsReport」を発行しています。

中川氏 そのレポートは、ドイツの機械工業団体VDMA(VerbandDeutscher Maschinen- undAnlagenbau)とSEMIが共同でまとめたものです。2012年9月18日に発表した最新版では、2010年第1四半期から2012年第2四半期までの、受注額(Booking)、販売額(Billings)、B/B比(Book-to-Bill ratio)が四半期ごとに掲載されています。このレポートによると、市場は非常に厳しい状況です。2012年第2四半期の販売額は7億600万米ドルと、前年同期の35%程度まで下がってしまいました。受注額も、6四半期連続で下降しており、2012年第2四半期の受注額は2億3500万米ドルと2012年第1四半期の20%まで落ち込んでいます。

セミコン・ジャパンと同時開催

—2010年まで6月~7月に開催されていた「PVJapan」ですが2011年から12月に開催されるようになりました。

中川氏 2011年のPVJapanも当初は7月に開催する予定でした。ところが東日本大震災が発生し、夏場の電力不足に対する懸念が出てきたことから、急遽開催時期を12月に変更することにしました。気温の上昇にともなって電力需要が高まる時期に、大きな電力を消費するイベントを開催するのはエネルギーに関連する業界として考え直すべきではないかという意見が、関係者の間で挙がってきたからです。これを受けて、SEMI、太陽光発電協会、PVJapanと同じ会場で展示会を実施している再生可能エネルギー協議会が協議して開催日の変更を決めました。この時点で、2012年のPVJapanも12月に開催することを決めていました。電力供給の状況が1年後に確実に回復しているという見通しが立てられなかったからです。

 2012年のPVJpanは、去年と同じように半導体製造装置および材料の展示会「セミコン・ジャパン」と同じ会場で同時に開催します。ただし、昨年は前半にPVJapan、後半にセミコン・ジャパンと同じ週内で連続する形で開催しました。会期が重なっていたのは1日だけです。2012年はまったく同じ日程で二つのイベントを開催します。両イベントの相乗効果によって、どちらのイベントも例年以上の来場者でにぎわうことを期待しています。実は、昨年のPVJapanで来場者が最も多かったのは、セミコン・ジャパンが同時に開催されていた日でした。今年は、両方の会場を訪れた来場者にコーヒを無料で提供するサービスも実施します。セミコン・ジャパンに参加する方は、是非PVJapanにも足を運んで下さい。

—2013年の開催時期については。

中川氏 2013年は、7月に開催時期を戻します。会場は東京ビッグサイト(東京都江東区)に変わる予定です。太陽光発電をテーマにしたイベントには、日差しが強くなる7月ころがふさわしいという意見が関係者の間で多かったのが開催時期を戻した理由です。

施工関連の展示を一段と強化

—PVJapan2012の見どころを教えて下さい。

中川洋一 氏
中川洋一 氏
1976年に東京エレクトロン入社後、アプライドマテリアルズジャパン、GEジャパンを経て、へリックステクノロジー、ノヴァ・メジャリング・インストゥルメンツの代表取締役社長。2008年1月、半導体やFPDをはじめとする製造装置・材料関連の国際工業界SEMIの日本オフィス代表に就任。

中川氏 PVJapanは、太陽電池セルおよびモジュールをはじめ関連する材料、製造装置、太陽光発電システムの施工など幅広い分野を網羅する展示会です。ただし、これまでは太陽電池、材料、製造装置の展示がかなりの部分を占めていました。今回は、施工関連の展示や企画が一段と充実する見込みです。固定価格買取制度の施行を契機にメガソーラーを建設する動きが活発化してきたことから、施工にまつわる技術、製品、サービスに関する情報のニーズが高まってきたからです。これとともに PVJapanの来場者も多用化が進むはずです。そこで固定買取制度施行後、はじめて開催される今回のPVJapanでは、こうした新しい来場者の方々のニーズに、いち早く応える必要があると思っています。 メガソーラーについては、集中展示スペース「特別企画ゾーン」の一つとして「メガソーラー・プラザ」を会場内に設けます。特別企画ゾーンは、最近注目を集めている話題をテーマにした集中展示スペースです。メガソーラー・プラザでは、メガソーラー市場に参入する企業の製品を並べると同時に、メガソーラーの誘致を計画している地方自治体や民間団体が情報を提供します。

業界のキーパーソンが勢揃い

—PVJapan2012では展示会以外にも様々なイベントが開催されています。

中川氏 PVJapanに合わせて様々な講演会やセミナーが開催されます。具体的には、基調講演に当たる「PVJapan ExecutiveFor um」、太陽光発電と再生可能エネルギーに関連する企業、教育機関、関連団体のキーパーソンが集まる「VIPレセプション」、先端技術や研究開発の最新動向をテーマにした「専門セミナー」、太陽光発電関連の様々な規格を検討する「SEMIスタンダード会議」などです。

 これらのイベントに関して注目していただきたいのが、SEMIの役員で、太陽光発電業界で活躍するキーパーソン、すなわち、Fraunhofer-Institute for Solar EnergySystems DirectorのEicke R. Weber教授、 Suntech Power Holdings Companyの創立者でExecutive ChairmanのZhengrong Shi氏、TrinaSolar Chairman and CEOのJifanGao氏の3人が揃って参加することです。このうちWeber 教授は、ExecutiveForumで講演を行います。そのほかの2名は、VIPレセプションに参加する予定です。3人が、PVJapanで顔を揃えるのは初めてです。

—専門セミナーに新しい動きはありますか。

中川氏 例年好評を博している専門セミナーでは、3日間の合計で8件のセッションが用意されています。このうち2本は特別セミナーで展示会場内の「メインステージ」で開催します。国際会議場で開催される他のセッションは有料ですが、特別セミナーは無料で参加できます。

 8件のうち2件が新しく設けたセッションです。一つは「PV発電ビジネス」。太陽光発電ビジネスの最前線で活躍する企業が、ファイナンスやリスクなど様々な観点から太陽光発電ビジネスを解説します。もう一つの新セッションは、展示会場で開かれる無料セッションの「施工・設置技術」です。住宅用と産業用の両方で太陽光発電システムの普及が進む中で、多様化する施工・設置技術を幅広く紹介します。

 固定価格買取制度の施行とともに日本の太陽光発電関連市場は新たな局面を迎えました。こうした中、有利にビジネスを展開しようとする企業にとって、最新情報を効率よく収集できるPVJapanは見逃せないイベントと言えるでしょう。多くの来場者が訪れて下さることを期待しています。