太陽光発電がテーマの展示会「PVJapan 2012」が、2012 年12月5日(水)~12月7日(金)の3日間にわたって幕張メッセ(千葉県美浜区)で開催される。そこでこれに先駆けて、マイクロエレクトロニクス、フラットパネル・ディスプレイ、太陽光発電用装置および関連材料の業界団体SEMIと共同で、このイベントを主催する一般社団法人 太陽光発電協会(JPEA)に、太陽光発電市場の最新動向やPVJapan 2012の見所などを聞いた。

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茅岡 日佐雄 氏
一般社団法人太陽光発電協会(JPEA)事務局長

—太陽光発電市場の最近の動向は。

茅岡氏 世界全体でみれば太陽光発電市場は着実の伸びているのではないでしょうか。最近まで、この市場をけん引していた欧州では、金融不安が表面化した2010年ころから市場が伸び悩んでいます。その一方で、中南米やASEAN諸国など需要が伸びている国や地域が、いくつか出てきました。それぞれの市場は、まだ大きいとは言えませんが、小さな市場を集めると、かなりの規模になります。また、大きな市場の広がりが期待されている中国では、太陽光発電の普及を促すために新たな施策を国が打ち出すと聞いています。これらの市場が、次のけん引役となることで、世界全体で太陽光発電市場の成長は続くと見ています。

—日本市場についても教えて下さい。

茅岡氏 JPEAがまとめた海外向けと国内向けを合わせた太陽電池出荷量を見ると、2011年度は前年度比約6%増の2686MWでした。2009年度と2010年度は、2年連続して前年度の約1.5倍と大きく出荷量が増えています。これに比べると、2011年度は一気に減速してしまいました。海外向けの出荷が大きく減ったのが主な理由です。実は、国内向けの出荷量だけを見ると対前年度比で約30%も伸びています。この背景には、再生可能エネルギーに対する消費者の関心が高まっていることがあると思います。最近では大手住宅メーカーが手掛けた新築住宅のうち太陽光発電システムを設置している住宅が半数以上を占めているそうです。手掛けた新築住宅の8割に太陽光発電システムが設置されているという住宅メーカーもあると聞いています。

—2012年度の国内市場の見通しは。

茅岡氏 2012年7月1日から新たな「固定価格買取制度」が始まったことから、2012年度は国内向け出荷量の伸びに拍車がかかるはずです。これまで「非住宅向け」とされていた発電量10kW以上の発電設備が増えるからです。この固定価格買取制度では10kW以上の設備で発電した電力は、全量を電力会社が一定の価格で買い取ることが義務付けられています。これが大きなインセンティブとなって10kW以上の発電設備が増えるでしょう。

 特に注目すべき動きは、新制度の開始を契機に集合住宅向けで10kW以上の発電設備が増えることです。比較的大きな屋根がある集合住宅ならば、10kW以上の設備を設置することは可能です。最近では、住宅用発電設備の発電量が着実に増えています。住宅用発電設備の平均発電量は、一昨年は4kWでしたが昨年は4.3kWに増えており、最新データでは4.5kWまで伸びています。沖縄県のように6kWを超えている地域も出てきました。この傾向が続けば、大容量の住宅用発電設備は着実に増えるはずです。

「施工技術者の認定制度」がスタート

図 日本における太陽電池出荷量の推移(太陽光発電協会のまとめ)
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—太陽光発電システムの普及に向けたJPEAの活動や取り組みを教えて下さい。

茅岡氏 太陽光発電システムを社会に定着させるうえで重要なことは、ユーザーの信頼にこたえる品質を実現できる仕組みを設けることだと考えています。ここで言う品質には、大きく2種類あります。一つは「施工品質」。ユーザーが増えるとともに太陽光発電システムを設置する条件が多様化します。様々な条件に柔軟に対応しながら優れた信頼性を備えた太陽光発電システムを構築できるようにするには、施工や設置に関する業界全体の技術やノウハウの底上げを図る必要があります。

 もう一つの品質は、「製品品質」です。太陽光発電システムは長期にわたって稼働させることが前提になります。このために不可欠なのが長期信頼性を実現するための適切なメンテナンスです。長期間にわたって安定して稼働する太陽光発電システムが実現できれば、新しい太陽光発電システムが生まれる度に発電量が増えていきます。これによって、日本における全発電量にしめる再生可能エネルギーの比率を着実に高めることができるでしょう。これら二つの品質を確保する為にJPEAでは、大きく二つの活動を進めています。

—具体的な活動内容は。

茅岡氏 施工品質の向上に向けた活動が「施工技術者の認定制度」です。以前から準備を進めていましたが、いよいよ2012年度から正式にスタートします。この制度は、住宅用太陽光発電システムの設置・施工に携わる方々を対象にしたもので、認定試験を実施して太陽光発電システムに関する一定の基礎知識を身に付けていることを認定する制度です。学習に必要な教科書もJPEAが中心となって編纂しました。製品品質に関しては、適切なメンテナンスを着実に実行するための「太陽光発電システム保守点検ガイドライン」を策定し、JPEAのホームページで公表しました。新たに始まった固定価格買取制度では、10kW未満の発電システムでは余剰電力を10年。10kW以上の発電システムでは発電した全量を20年にわたって電力会社が買い取ることになっています。このため、少なくともこれらの期間は安定して稼働させることが求められるでしょう。今回のガイドラインの登場を契機に、メンテナンスに対する業界の意識を高め、全ての太陽光発電システムに対して適切なメンテナンスが実施されることを目指しています。

 JPEAは、今年度40数回にわたって日本各地で、太陽光発電システムに関連する事業者を対象に、補助金制度の説明会を実施しています。こうした場を利用して、施工技術者の認定制度や太陽光発電システム保守点検ガイドラインを業界の皆さんに紹介し、認知を高める考えです。

新制度の全貌が明らかに

—PVJapan 2012の見所は。

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茅岡氏 一つは、いまご説明した施工技術者の認定制度や太陽光発電システム保守点検ガイドラインに関するセミナーです。PVJapanでは、展示会とともに「PVExecutive Forum」や「専門セミナー」など様々なイベントが開催されます。その一つである「普及セミナー」の中で、「施工技術者の認定制度と点検ガイドラインの概要」と題したプログラム(有料)を用意しました。認定制度やガイドラインの詳細を、ここで明らかにします。この中で認定制度の実施に向けて作成したテキストを公開します。この制度に興味のある方には見逃せないプログラムではないでしょうか。このほかにも、見所が数多くあります。是非足を運んで下さい。