36回目となる半導体製造装置および半導体材料の国際展示会「セミコン・ジャパン」が、2012年12月5日~7日の3日間にわたって幕張メッセで開催される。半導体業界における様々な変化を反映する形で、今回も新たな企画を随所に盛り込んでいる。そこで、このイベントの方向を決めるセミコン・ジャパン推進委員会の委員長を務めるアドバンテスト代表取締役会長の丸山利雄氏に、今回のセミコン・ジャパンの見どころや企画の背景などについて聞いた。

—セミコン・ジャパンの出展企業を取り巻く最近の市場の様子を教えて下さい。

丸山 利雄 氏
丸山 利雄 氏
セミコン・ジャパン推進委員会
委員長
アドバンテスト 代表取締役会長

丸山氏 マクロな視点で見れば、世界の半導体業界の先行きは明るいと見ています。技術開発や市場活性化の大きな動きが相次いで出てきたからです。市場については、スマートフォンやタブレット端末、ウルトラブックなど、半導体デバイスの新しいアプリケーションとなる機器の市場が成長しています。自動車の電子化やITCを採り入れたエネルギー・システムの普及を背景に半導体デバイスの用途が広がる機運も高まっています。一方、技術については450mmウエーハの導入に向けたデバイス・メーカーや装置メーカーの動きが活発化してきました。さらに3次元構造を備えた新しい半導体素子など新機軸の半導体技術を採用したデバイスの開発が、ここにきて進んでいます。

 こうした市場や技術の動きとともに浮上する新しいニーズに対応するために、SEMIの中心メンバーである半導体製造装置メーカーおよび半導体関連材料のサプライヤの皆さんは、新しい技術や製品を積極的に提案し、ビジネスをうまく盛り上げていると思います。SEMIの最近の予測では、2012年~2013年に半導体製造装置の市場は約10%、半導体関連材料の市場は約5%成長すると見ています。

市場における存在感が一段と高まる

—「セミコン」は世界各地で開催されているイベントです。日本で開催するセミコンの意義は。

丸山氏 「セミコン(SEMICON)」は、米国、日本、中国、韓国、台湾、ロシアなどで毎年開催されています。この中で、米国で開催される「SEMICON West」と日本で開催される「セミコン・ジャパン」は、特別だと思っています。半導体製造装置や半導体関連材料の市場におけるキープレーヤが集まっている地域で開催されるイベントだからです。一番長い歴史を誇るSEMICON Westは、これまで一貫して業界の発展に貢献してきました。最近では、業界の最新情報を手に入れることができる場として、半導体業界にかかわる世界中の人々が注目しています。

 有力な製造装置メーカーが集まる日本で開催されるセミコン・ジャパンは、半導体デバイスを製造する技術の最新の動きを把握できる場として、依然として世界の注目を集めているのではないでしょうか。特に最近では半導体デバイスの製造が、中国や台湾などアジア地域へとシフトする動きが進んでいます。これとともに日本で開催されるセミコン・ジャパンの特徴が一段と際だってきているように思います。実際、海外からの関心も高まっており、昨年のセミコン・ジャパンでは来場者の数が前年を下回ってしまいましたが、海外からの来場者数はあまり減っていませんでした。

「ネットワーキング」を一段と重視

—2012年のセミコン・ジャパンの概況を教えて下さい。

丸山氏 36回目となる2012年のセミコン・ジャパンでは、例年通り幕張メッセ(千葉市美浜区)のホール2~ホール8および隣接する国際会議場を使って、展示会を中心にセミナー、国際会議など多彩なイベントを展開します。展示会に出展する企業・団体の数は約700、展示小間数は約2000に及ぶ予定です。開催期間中の来場者数は、3日間の延べ人数で約6万5000人になると見込んでいます。2012年のセミコン・ジャパンの大きなテーマは、「Power of[X]」。この「X」は、次の三つを指しています。すなわち技術革新を表す「Innovation」、世界と日本の双方向の関係を表す「Global Interaction」、潜在する新しいニーズとチャネルを獲得するための「Connection」です。

 昨年と同じように別のホール(ホール9~ホール11)では、太陽光発電をテーマにした展示会「PVJapan」が開催されます。昨年は会期が1日重なっていただけでしたが、2012年は日程が完全に一致しています。これによって二つのイベントの相乗効果が昨年以上に高まり、それぞれのイベントが一段とにぎわうことを期待しています。半導体デバイスと太陽電池は、共通する技術が少なくありません。また応用分野が重なっているところもあります。このため、セミコン・ジャパンの来場者の中で、PVJapanに興味を持つ方は多いのではないでしょうか。

—2012年のセミコン・ジャパンの特徴は。

丸山氏 セミコン・ジャパンの企画の柱は、大きく三つあります。第1は製品や技術の「展示会」。第2は「セミナー」。第3は「ネットワーキング」です。このうち、近年重要性が高まっているのがネットワーキングです。この背景には、半導体市場が成熟するにつれて、サプライヤとユーザーのそれぞれで寡占化が進んでいることがあります。これにともなって、セミコン・ジャパンに出展する企業のマーケティング手法が変わってきました。具体的には、かつては先端技術を競って導入し、これを多くの顧客に売り込んでいましたが、最近では特定の有力顧客と密接に関わりながら製品開発を進めるケースが増えています。このため不特定多数に向けた情報発信の場を提供するだけでなく、効果的なコラボレーションを実現できる企業と出会う場を提供することが、セミコン・ジャパンなどのイベントに求められるようになっていると思います。

 そこで、2012年のセミコン・ジャパンでは、ネットワーキングにまつわる企画に力を入れました。具体的には、業界のキーパーソンが参加する「SEMIプレジデントレセプション」「SEMIスタンダード授賞式/フレンドシップパーティー」「サプライヤーサーチ/サプライヤーサーチ ハッピーアワー」「パビリオン交流パーティ」などのネットワーク・イベントを計画しています。

—展示会やセミナーについてはいかがでしょうか。

丸山氏 展示会では例年と同様に、「前工程プロセス装置・部品」「後工程プロセス装置・部品」「総合・材料・設備装置関連」の三つのゾーンを設けて展示を繰り広げます。これに加えて、「パビリオン」と呼んでいるテーマを絞った特設展示コーナーを複数設けて特徴を出す考えです。具体的には、「次世代技術」「LED/有機デバイス」「中古装置」「サプライチェーン」の四つのパビリオンを開設します。この中で、次世代技術パビリオンには、「パワー半導体」「3次元IC」「プリンテッド・エレクトロニクス」「MEMS」「イノベーティブ・ベンチャー」などの展示エリアを設ける予定です。

丸山 利雄 氏
丸山 利雄 氏
1973年4月 アドバンテスト入社。1989年6月、同社取締役。1995年6月、同社常務取締役。1999年6月、同社専務取締役。2001年6月、同社代表取締役社長。2003年6月、同社代表取締役兼執行役員社長。2009年、同社代表取締役会長。現在、一般社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA)政策役員、SEMI Board of Director、一般社団法人日本半導体製造装置協 会(SEAJ)副会長、一般社団法人日本経済団体連合会幹事も務める。

 セミナーおよび講演会のプログラムも充実しています。大きな見どころの一つは「オープニング・キーノート」でしょう。テーマは、「トップエグゼクティブが描く半導体産業の成長戦略」。東芝、インテル、Xilinx、TSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company)のエグゼクティブが登壇します。このほか三つの「スペシャル企画」も用意しています。後工程請負メーカー(OSAT)各社のビジネス拡大に向けた取り組みを紹介する「OSATフォーラム」、米国を代表する半導体企業が成長戦略について語る「米国サプライチェーン・フォーラム」、いよいよ本格化してきた450mmウエーハ導入に向けた業界の最新動向について大手製造装置メーカーや業界アナリストが語る「450mmフォーラム」です。例年好評を博している学生向けのプログラムも用意しています。今年は「半導体装置・材料業界 合同会社説明会」や高等専門学校の学生に発表の場を提供する「The高専@SEMICON Japan2012」を実施します。

 セミコン・ジャパンは、業界で活躍する企業が集まって企画している、いわば手作りのイベントです。一つひとつの企画には、業界における日本の存在感を高めたいという各企業の思いが込められているはずです。是非、多くの方々に来場していただきたいと思っています。