まずは、国内で2011年4月に販売が始まりました。

やまざき しゅんいち
長野県諏訪市出身。上智大学 経済学部を卒業後、商社勤務を経て、家業の時計店やホテルなどのサービス業に携わる。1992年から現職。

 これからは、より大きなマーケットである海外に向けて、どう売っていくかが重要なポイントになります。医療機器では販売を始めた後も、改良、改良の連続です。例えば、コントローラをさらに小型化するなどして、患者の使い勝手を高めていくことが不可欠になります。他社の製品と差異化して世界にも打って出るために、こうした改良のスピードを速めていきます。

 各社が世界シェアの確保を競う中で、価格競争も激しくなるとみています。特に今後、欧米だけでなくアジアなどにも普及させていくためには、こなれた価格にする必要があります。前提として高い品質の維持は当然ですが、その上で低コスト化で先行していくことが、全世界で勝っていくための条件になるでしょう。

生産体制についての計画を教えてください。

 クリーン・ルームが必要になる血液ポンプについては現在、年間300台の生産能力を備える諏訪で造っています。今後、300台を超える部分は、(ミスズ工業の)岩手県・北上の工場で生産する計画です。このクリーン・ルームを活用すれば、年間1000~2000台の生産は十分可能でしょう。さらに、4000台、5000台というレベルの規模が必要になったら、諏訪に量産工場を新設する考えです。

 2拠点での生産は効率が悪くなります。しかし、補助人工心臓は、東日本大震災のような震災に見舞われても供給できないというのは許されない機器です。供給責任の点でも、諏訪と岩手の2拠点での展開を図ります。

 コントローラは大掛かりな設備は必要ないので、どこでも生産できます。今は諏訪で造っています。

サンメディカル技術研究所は補助人工心臓のために立ち上げた会社ですが、今後、他の製品や事業を手掛けていく考えはありますか。

 もちろんあります。循環器分野や体内への埋め込みに関するノウハウは、この20年でかなり集まりましたから。具体的にイメージしている製品も、幾つかあります。

今後事業を拡大していく中で、他の企業との協業は検討していますか。

 既に考えています。先ほど述べたように補助人工心臓の改良を重ねていくと同時に、海外への販売準備を進めていかなければなりません。加えて、補助人工心臓に続く第2、第3の製品も手掛けていく方針ですから、とても我々のようなベンチャーのリソースだけでは足りません。

 できれば、国内の大手企業と組みたいと考えています。やはり「オール・ジャパンで」という意識があります。(相手は)医療機器メーカーである必要はなく、新たな分野に参入したいと考えていて、優れた技術を持っている企業も候補になるでしょう。

セイコーエプソンも候補の一つですか。

 セイコーエプソンには、これまでも多大な協力をしてもらっています。地元の企業ですし、状況次第で可能性はあるかもしれません。