【記者の眼】端的に映し出された四つの要件、「コーディネータ役」が重要に

 サンメディカル技術研究所のEVAHEARTの開発には、創業者である山崎壯一氏と、同氏の3人の息子がそれぞれ重要な役割を果たした。これは、今後の新規医療機器開発に必要な四つの要素を端的に映し出している。すなわち、「医療現場におけるニーズの把握」「医療ニーズに対応する技術シーズ」「医療ニーズと技術シーズを取り持つコーディネータ役の存在」「資金と経営者の意志」である。同社のケースでは、この4要素が幸運にもごく身近な範囲の中にそろっていた。

 4要素の中でも、これから医療機器開発への新規参入をもくろむ企業にとって特に重要になるのが「コーディネータ役の存在」だ。「医療ニーズ」「技術シーズ」「資金」は、サンメディカル技術研究所のように局所的に集まっていなくても、断片的にはあちらこちらに存在する。これらを集めて結び付けられる人材や部門をいかに機能させるかが、大きなカギを握る。

 サンメディカル技術研究所に他の国内企業が続くようにするためには、許認可の基準の明確化や審査の円滑化など、政府によるさらなる環境整備も不可欠だ。先が見えない霧の中をサンメディカル技術研究所が歩んだ約20年の歴史は、大きく前半10年が開発スタートから仕様決定まで、後半10年が評価や許認可に向けた作業の期間に分けられる。

 このうち医療機器ならではの工程と言える後者について、同社の山崎俊一氏は「もう少し要領よく、3~4年は短縮できたかもしれない」と振り返る。単に医療機器開発の経験がなかっただけではなく、評価や許認可に関わる指標などが整っていない状況が時間をどんどん長くしていったことは、想像に難くない。先進医療機器にはどういった審査が必要で、どの程度の時間や費用が掛かるのかといった基準を政府がより明確にして、企業が開発に当たっての事業計画をきちんと立てられる状況にすることが必要だろう。