時間が勝負

 そもそもi-Strokeがターゲットにしている脳卒中とは、どのような病気なのか。大きく分けると、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血の三つがある(図3)。脳の血管が詰まる、あるいは出血するという状態である。

図3 脳卒中は”時間”が運命の分かれ道
i-Strokeがターゲットにしている脳卒中には、大きく脳梗塞、脳出血、くも膜下出血の三つの症状がある(a)。いずれも、素早く適切な処置を施せるかどうかで、 患者の生死や予後は大きく左右される(b)。(図:東京慈恵会医科大学の資料を基に本誌が作成)
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 脳卒中は、かつては日本の死因の第1位だったが、現在では第3位。医療の進歩によって救命率が高まったことなどを背景に順位は下がったが、潜在的な患者数では1位と言ってもおかしくない。

 脳卒中の治療は、時間との勝負である。発症後、いかに迅速かつ適切に処置できるかどうかで、患者の生死や予後が大きく左右される。例えば脳梗塞の治療で は、発症から3時間以内に血栓を溶かす薬剤である「t-PA(tissue-type plasminogen activator)」を投与したり、8時間以内に血栓除去デバイスによる血管内治療を実施したりすれば、後遺症を軽減できる可能性が高い(図 4)。

図4 t-PAは3時間以内、血栓除去デバイスは8時間以内
図4 t-PAは3時間以内、血栓除去デバイスは8時間以内
脳梗塞の治療は、発症から3時間以内に「t-PA(tissue-type plasminogen activator)」を投与したり、8時間以内に血栓除去デバイスによる血管内治療を実施したりすれば、後遺症を軽減できる可能性が高いとされる(a、b)。t-PAは、急性脳梗塞に適用される脳血栓溶解療法の薬剤である。(図:東京慈恵会医科大学の資料を基に本誌が作成)

 繰り返すが、「発症」から3時間なのである。救急車で運ばれたり、画像診断を受けたりしている間に、あっという間に時間は経過してしまう。こうした時間 をいかに短くして、治療を始められるのか。治療に取り掛かる時間次第で、「社会復帰する患者」と「寝たきりになる患者」の分かれ道ができてしまうのである (図3(b))。