富士フイルムと共同開発

 いかに早く患者を治療できる環境に持ち込むか。そこで利用しようと考えたのが、スマートフォンである。誰でも使えること、いつでも使えること、どこでも 使えること、といった要素を満たしているからだ。i-Strokeのコンセプトを立案した3カ月後の2009年10月には、試作機が完成した。

 当初は一人で開発を進めていたが、問題にぶち当たった。それは、画像診断装置には米GE Healthcare社やドイツSiemens社、オランダRoyal Philips Electronics社、東芝メディカルシステムズなど、複数の開発企業があることだ。画像診断装置による撮影データを送信する際に、それらを一括して 扱うのが難しかった。

 そこで目をつけたのが、フィルム会社である。これまで各社の診断装置の画像をフィルム化してきた企業と組めば、スムーズに進むのではないかと考えた。そこで、2010年7月から富士フイルムと共同開発を始めたのである。

 i-Strokeは、病院の中にいても外にいても同じ環境で情報を共有できる。このため、セキュリティーについての質問をよく受ける。同システムのセ キュリティーについては、VPNを利用して情報を病院内のサーバーに見に行くコンセプトにしている(図5)。さらに、24時間(もしくは48時間)以内に 患者の情報が自動的に消えるようになっている。これらによって、一定のセキュリティーは確保されていると考えている。

図5 i-Strokeのシステム構成
病院内では院内無線LANを利用し、院外ではVPN接続による3G通信もしくは無線LANを用いることで、i-Stroke用サーバーとスマートフォンを連携させる。これにより病院の内外を問わず、医師間の連絡や指示、緊急時に必要な情報を得ることを可能にした。(図:東京慈恵会医科大学の資料を基に本誌が作成)
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