自立生活や不安解消をサポート

 これらを踏まえ、実際に何を手掛けていくのか。Philips社においては、患者のケア・サイクルを「H2H2H(home to hospital to home)」と呼んでいる。すなわち、在宅から病院に行って再び在宅に戻ってくることを指す。もちろん、病院でしかできないこともある。一方で今後は、在 宅でできることをどんどん広げていこうというのが基本的なスタンスである(図3)。

図3 在宅ヘルスケアのソリューションの例
Philips社が欧米で展開している在宅ヘルスケアのソリューションを示した。(図:フィリップス・レスピロニクスの資料を基に本誌が作成)
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 その一つとして、日本で2011年12月に開始したのが、緊急通報サービスである。伝統的な医療サービスとは異なり、高齢者の生活や心の不安の解消をサポートするようなソリューションである(図4)。

図4 緊急通報サービス用のペンダント型端末
図4 緊急通報サービス用のペンダント型端末
転倒を自動検知して通報する機能を備える。北米では既に75万人が使用している。

 高齢者には、自宅で暮らしたいという要望がある。一方で、家族(娘や息子)とは遠く離れた場所に住むケースも少なくない。また、自宅で暮らしたいと思い ながらも、高齢者が自立した生活を家で送れない要因の一つに、転倒がある。実際、高齢者が入院する理由として最も多いのが転倒である。例えば、骨粗鬆症や 脳溢血などの経験がある高齢者が、転倒に対する恐怖があるため、なかなか病院から出られないという現状もある。緊急通報サービスは、こうした課題の解決を 図るためのものと位置付けられる。

協力員を登録

 この緊急通報サービスには、大きく二つの機能がある。一つは、文字通り緊急通報の機能を備えること。もう一つは、転倒検知の機能を備えることである。

 まず緊急通報の機能は、一般的に存在するサービスと決して大きく違うものではない。高齢者が首からぶらさげるペンダント型端末、あるいは通信端末のボタ ンを押すと、コール・センター(「安心サポート・センター」と呼んでいる)につながる(図4)。安心サポート・センターでは「どうしましたか?」と状況を たずねる1次対応をして、「娘(息子)を呼んでくれ」と言われたら取り次ぐというのが主なプロセスである。

 サービスを利用する際に、何かあった際に駆け付けてもらう「協力員」をあらかじめ登録しておく。家族だけでなく、近所の方やマンションの管理人などである。日本で本サービスを展開することで、地域などにおける絆の醸成にもつながるのではないかと考えている。