内蔵センサで転倒を検知
もう一つの機能が、転倒検知である。ペンダント型端末の中には、幾つかのセンサが搭載されている(図4)。
例えば、気圧センサと加速度センサで、高齢者の動きを総合的に判断する。約250パターンの転倒の波形が記憶されており、その波形に合致した場合には転倒として認識し、自動的に緊急通報する仕組みである。
ペンダント型端末は、米国やイスラエル、欧州などのグローバル・チームで開発したもので、20件ほどの特許がある。緊急通報のボタンを備えるだけでは、 状況によってはボタンを押せないケースもあるだろう。そもそもボタンを押す余裕がないから、高齢者は転倒・滑落する。そこで、転倒検知機能によって、一層 の安心感を与えられるのが特徴である。
包括システムの構築が不可欠
緊急通報サービスは、あくまで我々が描いている世界観を実現するための一つのアイテムにすぎない。この他にも、服薬管理サービスやカルテや投薬データ、画像診断データの集約、在宅医療機器の遠隔モニタリングなど、多くのアイデアを持っている。
そうした多くのサービスを含めた、高齢者のヘルスケア・システムの世界観を示したのが図5である。真ん中に高齢者。その周りを、予防医学や健診、診断、治療、予後といったケア・サイクルが囲んでいる。しかし、それだけでは従来の医療を中心としたサービスと変わらない。
図5では、その周りをさらに、高齢者の生活に密着したサービスなどで囲んでいるのがポイントである。このような包括的なシステムによって、高齢者を支えることが重要である。
そのシステムを支えるのが、「テレヘルス・センター」となる。つまり、前述の緊急通報サービスの端末のボタンを押すと、テレヘルス・センターにつながり 包括的なサービスを受けられるという世界である。もちろんその前提となる基盤には、地域の絆や助け合う社会といった価値観が必要になる。
Philips社は、図5に示した通り、こうした世界観を実現する医療機器メーカーの一部分だと考えている。我々1社だけでは、高齢者を包括的に支える システムは構築できない。さまざまな企業などと連携しながら、地域に根ざしたサービスを構築することが必要だと考えている。
本記事は、2011年11月22日に本誌とデジタルヘルスOnlineが開催したセミナー「デジタルヘルスの未来2012」において、尾崎氏が講演した内容を基に、加筆・編集したものである。