電子技術やICTを活用した次世代の医療機器について、新たな有望市場と期待する向きは多い。本パネル討論では、次世代医療機器の開発に関わる障 壁を整理し、新市場創出に向けたカギや課題を“産官学医”のパネリストが議論する。進行は、医療機器センターの中野氏。パネリストには東京女子医科大学の 村垣氏、早稲田大学の岩崎氏、ロームの神澤氏、厚生労働省の高江氏、内閣官房の八山氏を迎えた。(小谷 卓也=日経エレクトロニクス)

パネル討論の様子
(写真:皆木優子、以下同)

避けられない規制の問題、技術とのギャップも課題に

中野氏 次世代医療機器の開発に当っては、規制の問題が避けられません。先ほど高江さんからも話があったように、特にこれまでにない最先端の医療機器については、新たな評価が必要になります。

 例えば、東芝のDNAチップや、サンメディカル技術研究所の補助人工心臓などは、世の中に出すことができた最先端医療機器の好例だと思います。実際、こ れらの背景には開発ガイドラインが整備されたという後押しもありました。そのあたり、まず高江さんから発言をお願いします。

高江氏 2005年から経済産業省と共同で、次世代の医療機器に対するガイドラインの整備を進めています。経済産業省は機器開発側のガイドライ ン、厚生労働省は審査の際の評価指標を作るという形です。例えば補助人工心臓も、こうしたガイドラインを整備した一つの機器になります。

 ガイドライン作りに携わる中で思ったのは、関係者の熱い思いをきちんと行政が受け止めて、しっかりまとめ上げるという強い意志がなければ、良いものがで きないということです。ですから、規制当局側である我々も、ガイドラインを整備することで、より良いものが世に出ていくんだという認識の下、なるべくアン テナの感度を高くして世間の動向をキャッチし、次のガイドラインをどのように作っていくのかを考えています。

 ただし、予算とリソースの制約があるのも実情です。作れたとしても、年間で五つ、六つ(のガイドライン)です。医療機器の分野は幅広いですから、全然足 りないですね。では、足りない分はどうするかと。取り組みの一つとして、(医療機器の)開発の早期から、例えばプロトタイプができましたというタイミング で相談ができるような仕組みづくりを今、PMDA(医薬品医療機器総合機構)と調整して進めています。早い段階で、例えば「こうした試験をしたらどうか」 という形でフィードバックすることで、結果として早い承認につながると考えています。