LG社は共同開発を軸に展開

 Samsung社と同様に、LG社も医療機器とバイオに注力していく方針を2010年に発表した(図5)。同社の場合は既に、医療機器や病院のデジタル化、ヘルスケアなどの分野に対して、Samsung社よりも早くから投資をしてきた。

図5 LG社の次世代医療に対する取り組み
図5 LG社の次世代医療に対する取り組み
LG社の取り組みのポイントと具体例を示した。(図:趙氏の資料を基に本誌が作成)

 関連する系列企業も幾つか持っている。病院のデジタル化や医療情報のシステム開発に優れたLGCNS社、バイオや医薬品を扱うLG生命科学、医療機器の 輸出や流通などを担当するLG商事、通信会社のLGU+などである。これらの系列企業のシナジー効果を高めるためにも、次世代医療のビジネスに注力しよう としているのだ。

 Samsung社は、さまざまな企業を買収して自ら手掛けていこうという戦略だが、LG社の戦略は少し異なる。単独で大規模な投資をするのではなく、前述の系列企業を軸に他社と共同開発をする、といった形で浅く広く手を広げる構えだ。

 共同開発の一例として、ある大学病院と提携し、病院向けのタブレット端末を開発している。端末の特徴は、小型カメラとLEDライト、温度測定機能を備え たペンが付いていること。ペンで患者の体温をチェックしたり、患部を見たり、撮影したりすることができる。そして、このペンでタブレット端末の画面をタッ チすると、取得したデータが端末に自動的に蓄積される仕組みである。

 Samsung社とLG社以外の韓国企業も、次世代医療のビジネスに注目している(図6)。例えば、韓国の通信キャリア3社はすべて、次のビジネスとし て医療分野に大きな関心を寄せる。このうちKT社は、慢性疾患の患者に向けた「Qケアサービス」というアプリを手掛けている。

図6 その他の韓国企業の次世代医療への取り組み
図6 その他の韓国企業の次世代医療への取り組み
例えば、KT社やBIT Computer社などが取り組んでいる。( 図:趙氏の資料を基に本誌が作成)

本記事は、2011年5月26日と6月9日に本誌とデジタルヘルスOnlineが開催したセミナー「次世代医療機器サミット2011」において、趙氏が講演した内容を基に、加 筆・編集したものである。