医療機器の有力企業を買収

 Samsung社は次世代医療に関して、大きく医療機器とバイオの二つの分野に分けて事業を展開する考えである。このうち医療機器に関しては、2020年までに1兆2000億ウォンを投資して、10兆ウォンの売り上げを達成する目標を設定している(図2)。

図2 Samsung社の医療機器分野に向けた取り組み
図2 Samsung社の医療機器分野に向けた取り組み
Samsung社の医療機器分野に向けた取り組みのポイントと具体例を示した。(図:趙氏の資料を基に本誌が作成)

 手掛ける医療機器の種類としては、特に血液検査と超音波検査、体外診断機器の三つに注力する方針である。これらの機器において、さまざまな製品の展開を図ろうとしている。

 一つの動きとして、Samsung社は2011年、医療機器専門企業であるMedison社を買収し、系列化した。同社は診断機器の専門企業で、特に超 音波診断装置では韓国で1位、世界でも5位の市場シェアを持っていた。Samsung社は、Medison社を買収することで、手っ取り早くさまざまな診 断機器のシェアを獲得できると判断した。加えて、Medison社は2000年ごろから3D映像の診断機器などを展開してきたこともあり、Samsung 社のディスプレイ技術との融合による製品価値の向上も期待できる。

 この買収は、前述のHME部門が手掛けたものである。同様に今後、Samsung社が他の医療機器関連企業を買収していく可能性は高いとみられる。

自ら新薬を開発へ

 Samsung社が注力するもう一つの分野が、バイオである。バイオ分野については、2020年までに2兆1000億ウォンを投資する計画だ(図3)。同分野では、医療機器よりも長い期間の投資が必要になるため、売上高の数値目標はまだ設定していない。

図3 Samsung社のバイオ製薬分野に向けた取り組み
図3 Samsung社のバイオ製薬分野に向けた取り組み
Samsung社のバイオ製薬分野に向けた取り組みのポイントと具体例を示した。(図:趙氏の資料を基に本誌が作成)

 具体的な取り組みとしては、例えば2011年2月、米Quintiles社との合弁でSamsung Biologics社を設立した。この他、仁川空港の近くにある人工埋め立ての島に現在、Samsungバイオパークを建設している。約27万m2の規模 を有する施設である。

 バイオ分野は、実際に成果が出るまでに長い時間が掛かる。まずは特許が切れた薬のコピーで売り上げを実現しながら、それを投資に回し、いずれ新薬を開発するというサイクルを考えているようだ。独自開発の薬を開発できるまで投資を続けることが、当面の目標である。