趙 章恩氏
趙 章恩氏
ITジャーナリスト
(写真:皆木 優子)

Samsung Electronics社は、2020年に向けた注力分野の一つに次世代医療(医療機器、バイオ製薬)を掲げている。2020年までに、同分野に合計3兆 3000億ウォンを投資する計画だ。さらに、LG Electronics社も同分野に注力すると宣言した。本稿では両社の取り組みに加え、韓国における次世代医療の動向などについて、ITジャーナリスト の趙氏が報告する。(小谷 卓也=日経エレクトロニクス)

 Samsung社は2010年、これから2020年までの10年間で、五つの分野を集中的に育成していくことを発表した。すなわち、太陽電池と自動車用 電池、LED、そして医療機器とバイオ製薬(以下、バイオ)である。これらの分野に、合わせて23兆3000億ウォンを投資するという(図1)。

図1 2020年に向けたSamsung社の5大注力分野
図1 2020年に向けたSamsung社の5大注力分野
医療機器とバイオ製薬が5大分野に含まれている。(図:趙氏の資料を基に本誌が作成)

  「我々はこれから、人類の健康を増進して、豊かな人生をサポートできるビジネスを展開していく」─。Samsung社 会長のKun-Hee Lee氏が述べた言葉である。このような使命感を持って、医療機器やバイオなどの次世代医療の産業を積極的に拡大させていくことを、会長自らが打ち出した のである。実際、同社は2010年、HME(Health&Medical Equipment)と呼ぶ部門を新設した。同部門が中心となって今、さまざまな医療機器関連企業やバイオ関連企業の買収を進めている。

 Samsung社が次世代医療の分野で狙っているのは、グループ内のノウハウの融合/複合化である。例えば同社は、韓国のソウルや地方都市に幾つか病院 (Samsung病院)を持っている。同病院で使う機器などをSamsung社が作るだけでも、かなりの売り上げになる。

 一方で、Samsung社が手掛けている半導体やディスプレイなどの技術を、次世代医療の分野にどんどん生かす方針である。例えば、3Dディスプレイな どの最新技術も医療向けに使いたいと考えている。さらに前述のように、関連企業の買収にも乗りだした。こうしたグループ内のノウハウの融合/複合化によ り、効率的な事業展開や、海外を含めた事業規模の拡大を狙っている。