ID連携で多様な医療サービスへ

 MEDICAは、救急医療時に必要な情報を記録しているだけでなく、GEMITSプロジェクトにおいてさまざまな医療サービスを受ける際の“鍵”にもなる(図5)。

図5 GEMITSの全体像
図5 GEMITSの全体像
GEMITSは、MEDICAを軸に、病院間情報連携などを実現するシステムである。(図:小倉氏の資料を基に本誌が作成)

 現在、「国民総背番号制度」が議論されているが、医療情報までそこに載せるのは少し難しいのではないかという議論が主流になっている。しかし、少なくとも医療に関して一つのID番号を持った方がよいというのは誰もが思うことである。

 MEDICAのID番号が、その役割を果たす。具体的には、インフラとしてのネットワーク、プラットフォームとしてMEDICAによるID連携の基盤上にさまざまなアプリケーション(医療サービス)が動くシステムを構築している(図6)。

図6 GEMITSの構築ステップ
図6 GEMITSの構築ステップ
GEMITSは、MEDICAをベースにしたプラットフォームを軸に、大きく三つの段階で応用範囲を広げていく考えである。(図:小倉氏の資料を基に本誌が作成

 現在、MEDICAのID連携を軸に開発しているプロジェクト(アプリケーション)は、大きく四つある。救急医療における時間軸の順番に並べると、①救 急車に乗る前の「階層別トリアージ」、②救急車に乗ってから病院に着くまでの「病院前医療連携」、③病院に着いてから2次病院に転送する際の「病院間情報 連携」、④病院を退院して要介護者になった場合の「緊急介護支援」、である(図5)。

 このうち①の階層別トリアージは、患者の救急度を判定するトリアージの階層化を図ることで、救急車の出動回数を最適化したり、救急病院でのリソース配分を適切にしたりすることを狙った取り組みである。

 患者自身が、これまでの自分の健康情報と変わったところがあるかどうかを自己判断するのが1次トリアージ。それで判断できなければコールセンターに相談 する。これが2次トリアージ。そこでも判断がつかなければ、あるいは最初から重症であれば救急車に乗る。ここが3次トリアージ。さらに、病院で医師によっ て正確な病名を決めるのが4次トリアージである。こうした一連の判定を、MEDICAのID番号を連続的に活用して実現しようとしている。