一変したデザインの位置付け

 脱安売り製品のありようは、製品開発におけるデザインの位置付けが根本から変わったことも示している(図5)。20世紀型の製品開発では、デザインは最 後に付け加えるものでしかなかった。例えば、初期のテレビには、家に置いて違和感がないように、家具調のデザインになっていた。「技術を広めるためのデザ イン」だったのである。

図5 デザインの位置付けが変わった
図5 デザインの位置付けが変わった
20世紀型の製品開発では、デザインは最後に付け加えるものでしかなかった。現在の製品開発では、「利用シーンを実現するためのデザイン」こそが、その製品の価値を決める。

 これに対し、脱安売り製品の開発では「利用シーンを実現するためのデザイン」が最初に来る。例えば、ルンバの円形は、障害物に引っ掛からないために必然 的に決まったものだ。外径は「ダイニング・チェアの足の間隔をくぐれる最大の大きさ」として割り出された。小さすぎると掃除できる幅が狭くなってしまうからだ。高さは、どこにでも入れるように10cmに抑えられている。

 こうした21世紀型製品開発の最たるものといえば、米Apple社の「iPhone」だろう。iPhoneのデザインは、まさにSteve Jobs氏の頭の中にあった「未来の利用シーン」を実現するためのものである。