地域や住宅のエネルギ管理に車載電池を活用することは、電池の実質的なコストを引き下げる可能性がある。電池の2次利用ビジネスが生まれるかもしれない。

 電池の2次利用とは自動車向けとしていったん電池を使ったあとで、ほかの用途で再び使うこと。2次利用時の販売価格をあらかじめ車載電池の初期コストから差し引くことができれば、電池のコストが実質的に下がる。ビジネスの成立には2次利用先の市場がいるが、住宅用途などは格好の市場になる。

 自動車の品質基準に合わせて造る車載電池の耐久性は高い。リーフを開発する日産は、「駆動用モータを動かすのに最大80kWもの出力に耐えられるように設計してある。住宅で使う6kW程度の出力は小さく、耐久性に大きな影響を与える要因にはなりにくい」(同社執行役員ゼロエミッション事業本部担当の渡部英朗氏)とみる。

 この車載電池の2次利用ビジネスにいち早く目を付けて実験を進めているのが伊藤忠商事である(図10)。同社は2010年3月、茨城県つくば市でEVを使って2次利用の可能性を探る実証実験を始めた。EVと電池には、伊藤忠商事が出資するノルウェーThink社のEVと、米Ener1社の子会社となる米EnerDel社のLiイオン2次電池を使った。


図10 車載電池の2次利用先として定置用蓄電池

図10 車載電池の2次利用先として定置用蓄電池
車載電池の使用後に定置用として使えれば、電池のコストを下げられる。伊藤忠商事の資料を基に作成した。

 この実験では車載電池の2次利用に欠かせない電池の利用履歴を通信機で収集し、その履歴を基に電池の劣化度合いを推定する技術を開発する。現在は1年間ほど実験した段階だが、「車両ごとに使われ方がまったく違うことや、1年程度なら電池の劣化はほとんどないことが分かった」(伊藤忠商事総本社開発戦略室環境・新エネルギーグループ担当課長の玉置曜氏)という。

 同社は実際のビジネスに向けた検討も並行して進めており、一定期間後に車載電池を買い戻すリース方式で販売する仕組みなどを検討している。リース方式であれば、例えば3年後に戻ってくる電池の数量が把握でき、2次利用を考える顧客に対して見通しを伝えやすい。

各社が守りの一手を