多くの業界がプラグインハイブリッド車や電気自動車に期待し始めた。注目するのは車両に積んでいる電池。東京電力福島第1原子力発電所の事故をきっかけに、爆発的に増えそうな太陽光発電の出力を安定化するために使いたい。自動車メーカー各社もその期待に応じる考えだ。ただし、車両の付加価値を高め、自ら主導権を握れる形であることが前提になる。

 地域内の電力需給の情報を管理し、さらには電力料金まで決める─。

 ほとんど電力事業者と言える役割にトヨタ自動車が挑み始めた。2011年6月から愛知県豊田市でプラグインハイブリッド車(PHEV)付きの16棟の分譲住宅を販売(図1)。同年9月には入居済みの住宅すべての電力関連情報を管理する「EDMS(Energy Data Management System)」を実験的に運用する。

図1 トヨタが電力情報を管理する
図1 トヨタが電力情報を管理する
「豊田市低炭素社会システム実証プロジェクト」でトヨタは、PHEVを導入した複数の住宅の電力を管理する。(a)は愛知県豊田市に建設した住宅。(b)はトヨタが開発した地域内の電力情報を管理するシステム。

 EDMSには地域内の太陽光発電の余剰電力量と、中部電力から供給される電力量との比率に応じて電力料金を変える仕組みを取り入れる。法律上、電力会社以外は一般の住宅に対して電力を売買できないため、トヨタは電子マネーに換えられるポイントを発行して対応する。

 自動車メーカーの範疇を明らかに超える試みだが、電力情報の管理に目を付ける自動車メーカーはトヨタだけではない。ホンダは、住宅内の電力消費量の情報を基に各種機器を制御するHEMS(Home Energy Management System)を自ら開発する方針だ。2011年5月、同社は埼玉県さいたま市にHEMS対応の住宅を3軒建設すると発表した。住宅にあるPHEVや電気自動車(EV)、太陽電池、定置用蓄電池、ガスエンジンを、ホンダが開発した「Smart e Mix Manager」と呼ぶ機器で制御する。2015年ごろの発売を目指す。

日本で身近な問題に