20XX年、トヨタ自動車が電力事業を手掛ける新会社を立ち上げた。会社名は「Toyota Electric Power Company(TEPCO)」。発電でも送電でも配電でもなく、電力の需要と供給を調整する役割を担う会社だ――。架空の話だが、根拠はある。いま、日本の自動車メーカーはこぞって地域の電力を最適化する実験に挑んでいる。車両に積む電池が再生可能エネルギの普及に役立つのならば、逆に電力事業がプラグインハイブリッド車や電気自動車の普及を後押ししてくれる可能性があるからだ。
連載
トヨタが電力事業者になる日
PHEV/EVの新しい活用法
目次
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最終回:車両情報まで他社に委ねる三菱自動車
日産は車載電池を販売
日産はトヨタやホンダと異なり、地域の電力情報の管理やHEMSを自ら手掛けない。「EVの本来の価値を高められる領域に力を入れる」(日産執行役員ゼロエミッション事業本部担当の渡部英朗氏)方針だ。EVから住宅への電力供給機能を他社に先駆けて実用化することや、車載電池の2次利用ビジネスの実現に力を注ぐ。
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第4回:PHEV普及と利益の両立狙うトヨタ
国内自動車メーカー4社がスマートシティやスマートハウスの実験に加わる。こうしたエネルギ需給の最適化に関連する事業領域は広い。このため各社が手掛ける範囲は、製品領域によって異なる。トヨタは壮大なプランを描き、ホンダは自前主義で挑む。日産や三菱自動車は他社との協業を重視して参入領域を絞り込む。
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第3回:トヨタが究極の一手
地域や住宅のエネルギ管理に車載電池を活用することは、電池の実質的なコストを引き下げる可能性がある。電池の2次利用ビジネスが生まれるかもしれない。
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第2回:PHEV/EV普及のカベを壊す
車載電池の魅力は安いだけにとどまらない。車載電池は数十kWの駆動用モータに電力を供給できるほど高い出力がある。これは、複数の住宅に電力を供給できるほどの能力だ。住宅1軒で使う電力は最大5kW程度。ある住宅の車両1台だけで周辺の住宅何軒かの太陽光発電の変動を抑えることも計算上は可能だ。
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第1回:自動車メーカーの範疇に収まらない
多くの業界がプラグインハイブリッド車や電気自動車に期待し始めた。注目するのは車両に積んでいる電池。東京電力福島第1原子力発電所の事故をきっかけに、爆発的に増えそうな太陽光発電の出力を安定化するために使いたい。自動車メーカー各社もその期待に応じる考えだ。ただし、車両の付加価値を高め、自ら主導権を握れる…