セルフチェックの期待が高いヘルスケア・テーマとは

 では、どのような分野でセルフチェックが求められているのか?

 調査レポート「デジタルヘルスケア、消費者価値に見るビジネス機会~疾病予防・抗加齢編~」を発行したテクノアソシエーツでは、消費者価値や事業性が高い具体的なヘルスケア・テーマとして、以下の7つを挙げる。

(1)メタボリック・シンドローム

メタボ予防のために、個人が容易に利用できる測定器として、血圧計、体組成計、活動量計がある。血糖については血糖測定器が糖尿病患者で使用されているが、血液採取を前提としているため、患者以外の利用は広がっていない。血糖や脂質(中性脂肪、コレステロール)の測定はニーズが高く、採血なしの非侵襲測定技術*の開発・実用化が望まれている。

*「非侵襲」とは、皮膚内または体の開口部へ器具などを挿入する必要がないこと。

(2)更年期ケア(メノポケア)

現在、メノポケアのために、個人が在宅でチェックできる測定器は実用化されていない。女性ホルモンの量や変化を測定することで、体調管理に役立てることができると考えられるが、現在は医療機関での測定に限られる。エストロゲンの場合、血液を検体として使い、測定するのが一般的だが、尿でも測定できる。また、唾液の女性ホルモン(エストラジオールとプロゲステロン)から、エストロゲンの代謝変動を調べる技術も開発されている。

(3)スキンケア

スマートフォンに接続した特殊カメラで肌の状態を確認するなど、個人が肌状態をチェックすることは可能になっている。目視では確認できない肌の変化や状態を画像データにすることで、適切なスキンケアが実現できると期待されている。

(4)メンタルケア

現在、個人が簡単にストレスやメンタル状態をチェックする機器やデバイスは実用化されていない。客観的にメンタル状態を把握するためには、小型センサーを活用して心拍から自律神経の変動を測定したり、唾液中のストレス物質を測定したりする技術の開発などが進んでいるが、まだ試行段階のものが多い。

(5)オーラルケア

歯や口腔内の健康状態を個人がチェックするには、自身で歯茎や出血の状態を確認することしかできない。口腔内の状態を個人が簡単に測定する技術は実用化されていないが、唾液は非侵襲で採取可能なので、オーラルケアはセルフチェックが適した領域となる可能性がある。

(6)ボディケア

立ち姿や姿勢の状態から、体のバランスやゆがみを測定する機器は開発され、一部のフィットネスクラブで導入されているが、一般にはまだ普及していない。鏡を使って個人がチェックすることは可能だが、主観的な評価にとどまってしまい、デジタル技術による定量評価には至っていない。

(7)アンチエイジング

アンチエイジングを標榜する医療機関では、血管年齢やホルモン・バランス、筋肉・体脂肪年齢、骨年齢などから老化度を算定したり、酸化ストレス度や抗酸化力、有害重金属量などから老化促進因子を検査することが多い。一方、これらの指標を個人が簡単に測定する技術は普及しておらず、基本的に医療機関への受診が必要となっている。