鑑みることが方法論のコア

 Type-Bのプログラムでは、物理に軸足を置いて既存の枠組みにとらわれることなく発想する習慣を身に付けていく。そのために実施するのが、以下のようなゲームである。実例として、「機電一体」体制を推進する自動車用コイルばねメーカーの松尾製作所(本社愛知県大府市)では、こうしたゲームを取り入れることで柔軟な発想の習得に取り組み、効果を上げている。

 このゲームでは図1のような木片を多数用意する。それぞれの木片の表面には、一目見ただけで何かをイメージできそうな事象や数式などを書き、裏面には通し番号を振っておく。ゲーム開始時は、木片の数字面が上になるようにランダムに配置し、プレーヤーはそれらの中から所定枚数の木片を選ぶ。そして、それらの木片の表面に書かれた題目をつなぎ合わせて規定の時間まで思考を重ね、そこから発想した物事について第三者にプレゼンテーションを行うというゲームである。

図1●Type-Bのプログラムで実施するゲームに使う木片
木片には、さまざまな事象や数式などが書かれている。

 例えば、「△」「∫(積分記号)」という2枚を選んだ場合、プレーヤーは「3角形を縦方向に積分すると万華鏡(3角柱タイプ)になる」などとアピールしたり、図形の持つ性質をアピールしたりする。この際、表現の仕方に制約は設けない。第三者を納得させられるストーリーを導き出せるかどうかを、ここでは重視する。

 このゲームに限らずN-BREATSでは、答えを教えるのではなく、答えを考えてもらうことを大切にする。その過程は長く複雑になる場合が多いので、要所要所で「ここで一度整理しよう」(論理的なつながりの整理)、「違う視点で考えるとどうなるか」(検討の深化)といったアドバイスを繰り返す。

 つまり、「鑑みる」*1ことが方法論のコアになっている。物事を鑑みることは、確固たるリファレンスを持つことであり、当然、基礎の重要性が増し、それらを身に付ける機会も増えてくる。結果、基礎に立ち戻って既存の枠組みにとらわれない考え方ができるようになる。

*1 鑑みる 『デジタル大辞泉』(小学館)によれば、「かがみの動詞化。過去の例や手本に照らして考える」ことである。