前回までの3回は、多くの機械製品には電気・電子部品が組み込まれており、機械設計と電気・電子設計の融合、すなわちエレ/メカ連携が不可欠になってきていることに触れた。加えて、現状のエレ/メカ連携はコンピュータの発達に伴って機構設計で培われてきたCADという環境の上に構築される形で進んでおり、メカ/メカ連携の域を脱していないと説明した。それでは、真のエレ/メカ連携はどのようにしたら実現できるのか──。今回からは、筆者らが提案する「N-BREATS」と呼ぶ方法論を紹介しつつ、そのための方向性を解説する。

まずは基礎領域に歩み出る

 真のエレ/メカ連携を実現するために筆者らが重要と考えているのは、端的に言うと、発生している現象を電気・電子工学と機械工学の共通基盤(基礎)となっている物理の視点で捉えられるようにすることである。N-BREATSは、そうした物事の見方へと技術者を促す方法論の1つである。

 日々の業務に追われる技術者は、とかく自分がやっていることを中心に物事を考えがちである。それは、まさしく自身の専門領域からしか物事を捉えていないということを意味している1)。そうした事実をあえて取り上げることによって、一度基礎領域という中立的な領域に歩み出る。この基礎領域から眺めるという行為が、物理現象として全体を俯瞰(ふかん)することにつながるのだ。

1)Kramer, R.,“Rethinking Trust,”Harvard Business Review, Jun. 2009.