「キルビー275特許成立まで34年もの間,特許庁と闘い続けたTI社の執念には本当に感服します。自分から積極的に権利を取りにいく。狩猟民族的な発想だ。それに比べて,やっぱり日本メーカは農耕民族的だね。お天道様頼みというところがある。そして,お代官様の取り立てからは逃げられないと思っている。田畑をもっているから,どうしても『お上』という発想から抜け切れない。だから,特許庁にダメといわれたら,すぐにあきらめてしまう」

(イラスト:梅田節郎)

 富士通でキルビー特許訴訟を陣頭指揮した山地克郎氏(現同社 法務・知的財産権本部長兼輸出管理本部長)は,米Texas Instruments Inc.(TI社)の知的財産権に関する姿勢をこう評する。

 富士通が闘うことを決めた相手は,「狩猟民族」の代表格だった。訴訟の決意を伝えるため,役員会に出席した井桁貞一氏(現同社 法務・知的財産権本部 特許部長)は,居並ぶ役員の前で危険な賭かともいえるこの闘いの必要性を説く。