2011年の日本の貿易収支は31年ぶりに赤字に陥り、所得収支やサービス収支も含めた経常収支の黒字は15年ぶりに10兆円を割り込んだ。製造業では、トヨタ自動車が生産台数で世界第3位に転落したり、大手電機メーカーが軒並み赤字を計上したりするなど凋落(ちょうらく)ぶりが見られた。

 東日本大震災やタイの洪水という特殊事情があったにしても、日本のものづくりが欧米のリーダー企業、韓国のニューリーダー企業、中国などの新興国企業の攻勢に遭い閉塞状態になっていることを示している。日本の企業はあらためて、世界で戦うための新しいものづくりの方法を確立しなければならない。

強いSCMを生かすECM

 に、Michael Porter氏が提唱した「バリューチェーン」に基づいた「ものづくりの流れ」を示した。マージン(利益)を獲得するのは販売動向調査からアフターサービスまでの「主活動」であり、この部分は現代的にいうと「サプライチェーン」である。一方、見込み生産型製造業では市場調査、受注生産型製造業では顧客からの見積依頼書の受領に始まり試験・量産試行で終わる「支援活動」があり、この部分はサプライチェーンを駆動させるための「エンジニアリング・チェーン」である。

図●ものづくりの流れ
Michael Porter氏が『競争優位の戦略』(ダイヤモンド社、1985年)で提唱した「バリューチェーン」を、製造業に当てはめたもの。サプライチェーンを回すことによってマージン(利益)を確保する。強いサプライチェーンを生かすには、「支援活動」であるエンジニアリング・チェーンの革新に着手する必要がある。
[画像のクリックで拡大表示]