現場で生じる課題を解く

 実は今,月1回ほどのペースで企業にうかがって「人間ソルバー」,つまり問題解決屋みたいなことをボランティア的にやっています。もう10年くらいになるかな。いろいろなメーカーの開発現場のトップが,実際に困っていることをざっくばらんに私に説明してくれて,その場で問題を数学に落とし込んで解き, 「こんなふうにしたらどうですか」ってアドバイスする。

 資料の持ち帰りは禁止。機密事項ですから。会議室でちょっとお茶を飲んでから「じゃ,お願いしま~す。今日のテーマは…」って問題をバッと見せられる。「お,今日はこれか」って,3時間くらいその場に詰めて,数式を書き,モデルを作り,ホワイトボードに書いて説明します。

 個々の内容は秘密なのであまり言えませんが,例えば,高温になる窯の中の温度を精密に測りたいとか,亀裂の発生を防ぎたいとか,機械の振動が何をやっても収まらないとか,実にいろんな問題がある。そうそう,インクジェット・プリンタのヘッドに付けたインク供給用のチューブが暴れちゃって開発が先に進まないという問題もありました。2000万円もするシミュレーション・ソフトで解析しても実験結果と全く合わず,対策が立てられない。