化ける定理は,におう

 こういう視点で数学をやっていると,役立ちそうな式や定理に触れたとき,においが分かるようになるんです。「これは5年後に大化けするぞ」とか。代数幾何ってありますけど,その中に可積分系理論というのがあって,それが私の得意分野なんです。数学者がさらに8年くらいかけてマスターするような領域です。そこで生まれたのが「渋滞学」を研究したときの基本式ですが,これは化ける数学の典型でした。

 そういうのを見つけると,もう武者震いですね。そしてアイデアや数式などをノートに書き留めます。ノートは既に何冊にもなっていて,寝るときも肌身離さず持っています。これって実は,原油よりすごい資源なんじゃないかと(笑)。一般的な数学者は現実と離れがちなので,すぐ隣に宝の山があるのにたどり着けないんです。