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第6回:中国は英国のアイデアを盗んで成長すべきではない

James Dyson= 英Dyson社 創業者/チーフエンジニア
2012/10/02 00:00
出典:The Times、2011年12月8日 、 (記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)
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 中国の大国としての地位は高まっている。しかし、流れ星のような成長速度に、技術やデザインを保護するための法律が追いついていない。中国の役人と、英国企業および政府大臣が明日(2011年12月9日)、知的財産に関して「UK-China symposium」で会合を持つ。とても頼もしい動きではあるが、こういった首脳級会談はいつも商売の話をするだけで、具体的な行動にはほとんどつながらないものだ。私たちは、英国のデザインとエンジニアリング、そして技術が被っている被害(究極的には輸出に与える被害)をなくすために、中国の知的財産法の具体的な変更を必要としている。

 研究開発に関する税金の控除を大企業にまで拡大させるとした、ジョージ・オズボーンの「Autumn Statement」は正しかったのだ。私たちは、中国やインドと製造コストの低さで競争することはできない。英国の将来の利益は、知的財産にこそ存在しているのである。そして、知的財産を育てるためには投資が必要となる。革新的な新技術を生み出すことで、私たちは他国を追い抜き、世界中に輸出をすることが可能になる。しかし、いくつかのあまり実直でない中国企業は、進歩することをまったく望まず、盗作を好んでいるようだ。

 収入が減っている時は、模造品が魅力的に見えるかもしれない。しかし、模造品を作ることは研究開発投資の減少につながる。もはや安いハンドバックだけの話ではない。偽造品は、アップルの店舗から米国の高性能軍事ミサイルの部品を含めた生活の隅々にまで浸透しているように見える。結局のところ、このことは技術革新を阻害し、また効果的に技術革新の意欲を失わせることになる。

 ダイソンの弁護士チームは現在、世界中で知的財産権に関する26件の訴訟を抱えている。このうちの15件は「新技術の(開拓時代の)西部地方」である中国で起こされた訴訟だ。私たちだけでなく、BAE Systems社やJ.C.Bamford社といった企業もまた被害を受けている。また、違反者を見つけ出すために使ったお金は、研究開発に回せなかったお金ということになる。

 私たちがマルムスベリーで600人のエンジニアを抱え、週に150万ポンドを研究開発に投資しているのは、誰も持っていない技術を生み出すためである。私たちは、Dyson Hot heaterを完成させるまでに、熱力学と流体力学の専門家を含む22人の技術者チームによる研究と開発、そしてテストを3年にわたって行った。残念なことだが、私はすぐに模造品が出るだろうと思っている。

 このアイデアへの投資は、悪い経済状況の中でもリターンを生む。コンピュータ用のチップをデザインするARM社は、第3四半期の利益を2倍にした。英国企業はアイデアに投資し、それらを世界中に輸出することによって経済不況の中で成功してきた。しかし、私たちが懸命になって知的財産を守らなければ、そのことは価値を失ってしまう。

 ダイソンはモノを発明する企業である。中国の法律を変えることはできない。Bell Pottinger社がこの問題を取り上げたが、私はこの問題をもう長い間、つまり私たちの欧州における競争能力についてまとめたレポート「Ingenious Britain」を執筆する前から、政府のBusiness Advisory Groupのメンバーとして強調してきた。デーヴィッド・キャメロンが英国の知的財産を守るために中国政府を呼び出したことは、英国経済にとってこの問題がいかに重要かを彼が知っていることを示している。

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